海賊 | ナノ






「大変だー!大変だ名前ー!」



ぐっすりと深い眠りの世界にいた私を、ルフィの馬鹿デカイ声が強引に現実世界へ引き戻した。私は咄嗟に傍らに置いていた刀を素早く掴んで体を起こした。



『ルフィ何?!襲撃かなに…か……』

「おれ、」



…私まだ夢みてるのかな。



「おれ、猫になっちまった!」



ルフィに耳と尻尾がついてるように見えるんだけど。



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『とりあえず順を追って考えてみようか』



甲板でルフィを目の前に座らせながら、私は手を腰にあてた。ルフィは楽しそうにニコニコしているんだけど、その姿は明らかにおかしい。頭には黒い毛の猫耳と、手足も先の方だけが手袋とブーツを身につけているみたいな格好で猫になっている。お尻には同じ色の尻尾がゆらゆらと揺れていた。



『とりあえず、それってコスプレではないんだよね?』

「コスプレってなんだ?」

『ちょっとごめん』



私は猫耳と尻尾に手を伸ばして引っ張ってみた。



「いててて!痛ェよ!」

『本当にくっついてる…ていうか生えてる』

「な!おもしれェだろ!」



ケタケタと笑うルフィはこうやって耳や尻尾がついてることに関して全く動揺していないみたいだった。



『なんでこんなことに…』



ルフィはうーんと唸った。その間にも耳や尻尾がぴょこぴょこと動いていて、猫が大好きな私は、どうしてこんなことになってしまったのかと考える反面そのもふもふしているだろう毛並みを触りたい衝動を抑え込んでいた。



「あァそういやァ昨日、どっから入り込んだのか知らねェけどおれの特等席に猫が丸くなって寝てたんだ」



そう言ってルフィは船首を指差した。



『それで?』

「どけよって言っても目開けておれを見ただけで全然どこうとしねェし、仕方なく隣に寝転んだんだ」

『うん』

「で、そいつがすげェ気持ち良さそうに寝てたから「おれも猫になりてェなァ」って言ったんだ」

『……え、まさかそれで?』

「それ以外に猫に会ってねェもん」



この海賊団に入って色んな所行って、たくさん不思議な人に出会ってたくさん不可思議な現象にも遭遇したけど、私の想像の上をいくおかしな事はまだまだあるみたい。



『ど、どうしようね?』

「どうって?」

『このまま元に戻らなかったら…だって海賊団の船長が猫なんて!締まらないじゃない!』

「んー、まァいいじゃねェか」

『いやいや…!』

「そのうち戻るだろ!」



な?って首を傾げて笑うルフィ。そんな姿を見てたら本当にまァいっかって思えてくるから不思議。



『…あのさルフィ』

「ん?」

『元に戻る前にお願いがあるんだけど』

「なんだ?」

『…ちょっとごめん』

「え?わっ、ぷ!」



私は素早くルフィの腰の辺りに手を滑り込ませ、ぎゅっと抱き付いた。



「どうした?名前」

『うわ〜もふもふ〜癒される〜。私猫好きだからさ、さっきから触りたくてしょうがなかったんだよね』

「フーン」



ルフィはそう言うと私の背中に手を回してぎゅっと抱き締めてくれた。その手ももふもふしてるから気持ちが良い。



『うへへへ〜』

「…名前の体って柔らけェなー」

『そう?普通だと思…っ、!』



私の肩にこてんと首を預けたかと思うと、ルフィは抱き締めていた腕にぎゅっと力をこめてきた。



『ル、フィ?』

「温けェ〜…なんか落ち着くな」

『そ、そう?』

「あァ、おれの体とは全然違う」

『ルフィは筋肉が凄いからねー。私だって一応筋肉ついてると思うんだけどね』

「ははっ」



ルフィは体を離して、私の頬を両手で包んだ。肉球までついてるの?!すごいぷにぷにする…!



『ぷにぷに〜!気持…』



その時不意にルフィの顔が近付いてきて、あれ?なんて思ってる間もなく口付けられてた。



『っ、…ちょっ……ル、……』

「いいから。…ちょっと黙っとけよ」

『ん…』



軽く触れていただけのそれは段々深くなっていき、私も目を瞑ってルフィを受け入れた。頬を包んだままの手に触れると、さっきまでとは違う感触が、



『っ、ルフィ!戻ってる!』

「え?本当だァ!」



私は握ったルフィの人間の手をわきわきと触った。さっきまでついていた猫耳と尻尾もいつの間にか無くなっていた。



『なんでだろう?』

「あれじゃねェか?」

『あれ?』

「運命の奴とチューすると呪いがとけるってやつ!」

『なーに言ってんの!』



ルフィの背中をばしんと叩くと、なんだよ〜と言いながらいじけたような顔をしていた。



「名前はおれが猫の姿じゃなきゃぎゅってしてくれねェのか?」

『え?』

「だーかーら、この姿だとぎゅってしてくれねェのか?」



寂しそうに言うルフィがおかしくて、私はさっきしたみたいに抱き付いた。



「やっぱり柔らけェなァ名前は」

『…でもキスされたのはちょっと…』

「嫌か?」

『嫌って言うか…不意打ちでされるとびっくりするから』

「…不意打ちじゃなきゃ良いのか?じゃ、するぞ」

『そう言う意味じゃ…』



そう言うとルフィはまたそっと唇を押し当ててきた。遠くの方で、猫の鳴き声が聞こえた気がした。





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アルさまより*
/デシタルモニカ

「もしもルフィが猫になったら」

9万打企画に参加させて頂きありがとうございました!
わたしには書けないようなあまああい感じの内容にして下さってありがとうございます!
また遊びに行かせて頂きますねー!これからも素敵サイトの運営頑張ってください*