海賊 | ナノ






「なあ、喰いもんくれよ」


本を読んでいると目の前に座ったルフィがそんなことを言った。腕に顔を乗せて少し上目がちにわたしを見上げている。目、でか。…じゃなくて。


『いまさっきお昼終わったとこじゃん』

「…」


むう。

テロップを付けるとしたらきっとこんなだ。少し疑問がちにそう尋ねたのに、返ってきたのは不満そうな顔。な、に?どうしたのでしょうか、うちの船長さんは。


「知ってんだぞ」

『なにが?』

「今日、ハローウィンっていうんだ」

『あー』


この間、上陸した島でそんなことを聞いたのを思い出した。ああ、あれね。で、それがどうしたの?


「だから喰いもんくれよ!」


待ちなさい待ちなさい。まず、会話の成り立ちがおかしいぞ。それに確かハロウィンってお菓子を貰うものじゃなかった?なんでこいつの場合「おかし=喰いもの」になってるんだ。

嬉しそうな顔をしたかと思うと、一瞬で先程の顔に戻り戸惑うわたしをまた不満そうに見つめた。


「知ってんだぞ」


だから、なにが。本日二回目ですけど。


「お前…、チョッパーに食いもんあげたの知ってんだぞ!」

『あ』


あ、そういえば。そうさっき。たまたまポケットにキャンディーが入ってて、たまたま傍にチョッパーがいて。チョッパーが可愛かったものだからあげたんだった。

それはもう嬉しそうに、ほんとに嬉しそうに受け取って喜んでくれたから嬉しかったなあ。でも、どうしてルフィがこんなに不満そうなんだろう。

はたから見たらまるでわたしは証拠を突き止められた犯人で、目の前で偉そうにえばっている彼は刑事のようだけど。ゼッタイチガウ。しかもだから「喰いもの=キャンディー」って。


『ぐ、偶然だってば』

「んなのずるい!」


それにもうキャンディーも持ってないし、困ったなあ…。そう思った時、彼はイスをがたんと鳴らせて立ち上がった。

それにびっくりして体が引きそうになったのを、肩を掴まれルフィの顔がぐいっと近くにきて、

口を食べられた。


「知ってるか」

『…え、?』

「喰いもんくれない奴は、喰われるんだ」



らまわりなくのいさなきもち。

トリックオアトリート?そんなの知らねえよ




▼▼▼▼
20101025
happy halloween!