海賊 | ナノ






『わたし、ルフィが女でもきっとルフィのこと好きになると思うの』


甲板のマストに寄りかかりながら気持ちいい風に当たる。かもめがクークー鳴いていて、今日の風もとても心地好くて、隣にルフィがいることが嬉しくて、ひょんと思ったことを言ってみた。

けれど三十秒くらいしても応答がなくて、寝てるのかと思って顔を覗き込むと


「くくくっ…!」

『…!わっ笑わないでよ!』


や、やっぱりおかしいこと言ったかな。なんかルフィに笑われるなんて悔しい。


「別にバカにしてねぇよ、嬉しいんだ」


チラ、とだけもう一度隣を見たら、初めてそんな風に笑うルフィがいて、いつもみたいに自信に溢れた笑顔じゃなくて、恥ずかしそうに、嬉しそうに笑っていて。頬が熱くなった。彼はこの船の船長で、三億の賞金首だけど、一人の十七歳の少年なんだ、って。思った。

じっと見ていると、今度は拗ねたような顔でそんなに見んなと言ってわたしを見て

そっとキスをした。

小さくぶつかって、噛み付くようなキス。驚いて少しよろめくわたしを気にもせずに、手を結ぶ。少し乱暴で雑な彼だけと、すごく繊細で優しい。そんなルフィが好きなんだ、って思った。

ゆっくりと唇を離すとじっと見つめられて、わたしの胸はどきどきと煩くなる。わたしもその真っ直ぐな瞳を見つめ返した。


「おれが女だとこういうこと出来ねぇぞ」


そんなの嫌だろ?とわたしをぎゅっと抱きしめてそう言った。そんなのずるい。答えなんて分かってるくせに。


『…やだ』

「しし!おれも絶対ぇやだ!」


そんなの、そんなの嫌だけど、たとえルフィが悪魔だろうが何だろうが、わたしがまた生まれ変わったとしても、きっと好きになると思うの。自然にね、惹かれあうんじゃないかな、って。


「おれ、好きすぎてるな」


それは、わたしも同じ。




あまいひととき




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くくく、って笑わせたかった。
20100819