「風邪引かれたら困るからな!」
そう言って自分のベストをわたしの背中にかけた。正直言ってしまうと全く暖かさは変わらない。重みもなければ、ただ布が背中に乗っているという感覚だけ。
けれど、たまらなく嬉しい気持ちでいっぱいになった。わたしに気を遣ってくれてる…!
ありえないし、不覚にもその笑顔にときめいてしまったのだ。人に気なんて遣えるんだね。
いやしかしバットしかし。
ときめいたのもつかの間。隣にいる船長は只今上半身裸である。これでもわたしだって一人の女の子である。それにまたルフィに想いを寄せている訳である。上半身裸の姿でそんなニカッと笑顔を向けられてしまっては、違う意味でわたしの身体は熱くなってきた。
というか、元はと言えばルフィがいけないんだ。島に着いた途端、わたしを引っ張って仲間の声も耳に入れず走り出した。一緒にいれるから、正直嬉しかった。けれどジャングルのような森に着いた途端雨が降り出してしまったのだ。
『る、ルフィこれやっぱ着て!』
「そしたら名前が風邪引くだろ?」
『わたしよりルフィの方が風邪引いちゃうよ』
「大丈夫だ!俺、風邪とか引いたことねーし」
引いたことないとか、どんだけ元気野郎だよ!確かに風邪引かなさそうだけど、わたしの心臓が持たないのよ!お願いだから服着てちょうだい!
「いいから着てろよ」
いっちょ前なセリフを言って退けた彼に不覚にも心臓が高鳴る。
その気持ちはとっても嬉しい。わたしを思って言ってくれたそのセリフが嬉しい。けれどベスト一枚で差ほど変わりはしないのだ。逆にわたしの身体はヒートアップ寸前。
けれどもじもじしているわたしに気付いたのか、そーか!と頷いてわたしの肩からベストを取ると自分の腕に通して着始めた。わたしはホッとしてルフィを見上げたときだ。腕がぐるんと背中に回ってギュッと抱きしめられてしまった。
い、いま何が起こっているんだろう。
わたしの顔はルフィの胸に埋もれ、身体は回された腕の中。ルフィの肌は思いの他とても暖かくてわたしの身体は更にヒートアップ。雨でからだが若干濡れていたため、しっとりと二人は更にくっつき、どうしようもなくて恥ずかしさを堪えるために唇をぎゅっと噛んだ。
「これならお互い風邪引かないで済むよな」
熱じゃ済まない
風邪どころじゃないっつの!
- - - - 20100629
|