空のかもめを見上げていると麦わら帽子が目の前を飛んでいくのが視界に入った。おや、確かあれはルフィさんのではあるまいか。あんな大事なものが何故目の前を飛んでいるのだろうと思いつつも、手が自然と動いてそれを掴んだ。
「おー名前!ありがとなー!」
柔らかな麦がわたしの肌を撫でる。両手で帽子を掴んだ瞬間、持ち主の声が聞こえてきた。
『もう、危なっかしいんだから』
にしし、と全く反省の色なしの笑顔をわたしに向けてサンキュー、と帽子を受け取った。その笑顔が好きだからどうしても一発かましてやろう、と思っていた気持ちも萎んでしまう。
「何してたんだ?」
『かもめを数えていたの』
「ふーん、面白いのか?」
『あんまり』
そうか、と笑って彼は床にごろんとなってわたしを見上げて隣をばちばちと叩いた。胸がこそばゆいのを抑えてわたしも床にごろんと寝そべった。さっきよりもかもめ増えてるなぁ。お腹の毛がふさふさしていて気持ち良さそう。やっぱり一人よりも二人でこうしてる方がなんだかいいなぁ。そんなこと考えてなんとなく隣を見たらルフィと視線がばっちりぶつかった。
『…な、なに!』
「んや」
『び、びっくりするじゃん』
ルフィが隣にいるというだけで普段よりも心臓がとくとくと、うるさいっていうのに。
「名前、好きだ」
…。なんだなんだ。今、隣から問題発言が聞こえてきたぞ。何かの聞き間違いかもしれない。よし、ここは落ち着きが肝心だ!
『わたしも、好きだよ』
でも、知ってる。ドキドキしてるわたしがいても、ルフィの好きがわたしの好きとは違うこと。真剣な顔して言うからビックリするじゃんか。顔が熱くなるじゃんか。
「違ぇぞ!」
『…はい?』
「お前分かってねぇな」
『な、何がよ』
「…だからお前が思ってるような好きじゃないんだ」
『え?』
わたしが思っている好きと違う?仲間としての好きじゃないってこと?それって、もしかして…。
『もしかして、わたしのこと”食料”として見てる!?いくらルフィだからって…ヒドイ!』
「ち、違ぇぞ!」
『わかった、さっきサンジくんが作ってくれたプリン狙ってるんでしょ!?わたしの大好物なんだからあげないからね!』
「全然違ぇ!(喰いたいけど)」
『もうなんなの!』
「だから、おれは名前が好きなんだ!」
『分かってるってば…わたしも好き!』 「だーかーらー!違ぇっつってんだろ!」
『違うも何もわたしが好きって言ってるんだから何も違わないじゃない!』
「いーや、お前は分かってねぇんだ!理解力が足らん!」
『ルフィに言われたくないですよーだ!そもそもルフィこそわたしの気も知らないでいつもへらへらしちゃってさ!』
「なんだとー!?うっせー!おれは名前が好きなんだ!」
『だから!わたしだってルフィが大好きなの!』
鈍感ベイビー
「おいアイツらいい加減にしてくれよ」
「うるさくて敵わないわ」
「鈍感にも程があるぜ」
「あら、幸せそうでいいじゃない」
「ルフィと名前は仲良しなんだな!」
- - - - 20100502
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