「クソゴム!名前ちゃんに気安く触ってんじゃねぇ!」
キッチンに入るや否や、わたしに抱きついていたルフィはコックによって蹴り飛ばされた。
「なにすんだよサンジ!」
そうは言ってもこれは日常茶飯事。わたしに触れるという行為が彼には理解出来ないらしい。
「おれだって…おれだってまだナミさんの肩にすら触れたことねぇんだぞ!」
拳を震わせながらそう叫ぶうちのコック。知るかよ!と突っ込んでくれたウソップにわたしも心の中で賛同した。それでも「いいじゃねぇか」とわたしに擦り寄ろうとする船長は再びムートンショットを喰らっている。
でも確かにこうやってサンジくんが止めに入ってくれなければわたしの心臓は保っていられないだろう。だってこいつ、無意識なんだもん。結構普通に過ごしてるの辛いんだよね。そりゃさ、嬉しいは嬉しいんだけど。この船長はわたしの気なんか知る由もないからムカツクのだ。
「なんだよ!減るもんじゃねぇだろ!」
「減るに決まってんだろ!日に日におれのハートが擦り切れてくんだよ!」
いやだから知るかっつの。そんなわたしたちのツッコミ(わたしとウソップ)はもはや彼たちには聞こえないようだ。
「いいか、そういうことが出来るのは恋人に限りだ!」
「恋人?」
「そうだ、それこそ恋人の特権ってもんだ」
二人を無視してウソップと話をしているとそんな会話が聞こえてきた。サンジくん、そんな特権誰が決めたの?あーあ、うちの船長に恋人の話なんかしたとこで時間の無駄ですよ。
「おい名前、あいつらどうにかしろよ」
「なんでわたしなのよウソップ、それに無理」
「元の発端といえば名前だろ?」
なんですと?その長い鼻半分に折り曲げてやりましょうか?
「いいか、恋人には三つの特権が与えられるんだ」
「なんだ?うめーのか!?」
「バカ、ちげぇよ、喰いモンじゃねぇ。まずはだな…」
「ふんふん」
キッチンが賑やかになってきたところでわたしとウソップの間にチョッパーがやってきてあの二人は何してるんだと聞かれたので「お勉強会だよ」と言っておいた。 そしてわたしが紅茶を一口飲もうとしたときだ。
「分かった!」
ルフィの元気のいい声が響いて、振り向くとルフィが嬉しそうな顔をしてこちらにやってくる。まるで獲物を見つけた猛獣のように。
「名前!恋人になろう!」
その次は、
「んで、ちゅーしよう!な?な!」
『ちょ、サンジくん!?ルフィに何教えたの!?』
「い、いや、おれは恋人の定義を…」
「捉え方間違ったんじゃねぇか?」
- - - - 20100508
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