目の前に差し出された肉を見て何度か目をパチクリさせた。周りの皆も彼の行動には驚いたようだ。皆、口をぽかんとさせている。
「なんだよ、いらねーのか?」
『えっあ、いや、そういう訳じゃないんだけど…』
「そうか!んじゃ喰え!」
『むご…!…む』
なんつー奴だ。いくらわたしが夕食を食べ終わったというのにまだ足りない、と声を漏らしたというだけであのルフィが大好きな肉をわたしにくれるなんて。無理矢理口に押し込まれたそれはわたしには辛すぎる。
「ふふ、船長さんは名前のことがお気に入りみたいね」
「おま!レディになんてことするんだ!名前ちゃんにはおれが新しい料理作ってやるだろ!」
「ルフィが肉をあげた…」
「全く。名前の身にもなってやんなさいよ」
「苦労性だな」
「いいな名前!」
「麦わらも無茶な奴だぜ」
「ヨホホ!微笑ましいですね!」
ちょ…!そんな陽気なこと言ってないで早くこの肉引っこ抜いてっての!そうこうしている間にみんなは食事を済ませてぞろぞろとそれぞれの職に帰ってゆく。
こらこら、なにを微笑ましい海賊のありふれた時間にしようとしとんのじゃ!まあ肉での窒息死は免れたが、いまだに目の前の船長は何やら嬉しそうに笑っている。
「うまかったか!」
『う…うんまあ』
「しし!良かった!」
『なんでまた肉なんてくれたの?』
「名前は特別だかんな!おれの特別なもんあげたんだ!」
『え?』
「名前にならなんでもやるぞ!」
わたしがルフィの特別枠に入っているだなんてそれだけで嬉しい。いや、それって肉と同レベなだけなのだろうか。というか、ルフィが人に食べ物を、ましてや肉をくれるなんて一大ニュースなのに。
「他に欲しいもんあるか?」
『…何でもいいの?』
「ああ!」
そんなに目をキラキラさせて聞いてくれるものだから、期待に応えなければいけない。何が欲しいって言われてもなぁ。…あ。
ぽん、と頭に浮かんでしまう悪い心。
笑顔でなんだなんだ思いついたのか、と聞いてくる彼にきゅんとしながらも、知ってるかなぁと悩む。でもルフィも男の子だしなぁ、んーでもアホだしな。まあ、言ってみるだけ、ね!
例えば、キスだとか
「そんなのお茶のこヘイヘイだ!」
『ヘイヘイって何…ん、』
- - - - 20100428
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