これ以上抑えきれないと思った。心臓がどくんどくんと高鳴っていて、うるさい。夕日を眩しそうに麦わら帽子で避けながら笑っている君が好き。隣で海の水の中にぽちゃんぽちゃんと石を投げる君に恋してる。抑えられる術などわたしにはなかった。
『ルフィ』
「ん?」
『好きだよ』
「おれも好きだ」
『…好きなの』
「ああ、だから分かってるって」
『違うの…そういう好きじゃなくってね、もっと好きなの』
「どういう意味だ?」
即答で返ってきた”好き”に心の中で苦しく笑った。君はいつだって冒険に恋をしているから、わたしの恋なんて知らないよね。わたしが君を想う気持ちもきっと知らないよね。でもいいの。わたしを通り越えた遠くを見据えている君が好きだから。冒険に憧れて、輝いている君が好きだから。しょうがないんだ。
麦わら帽子を被った君はまだ首をかしげて不思議そうな顔をしている。頬をつまんで思いっ切り伸ばしてやりたい。
それとは裏腹に伸びた腕はルフィの首元に巻き付いた。そんなわたしにびっくりして、からだが一瞬揺れる。
『好き、なの』
「…どうした?名前」
『分からなくてもいいの。それでもいいから、今だけ、』
いつもと違うわたしにきっと驚いてるよね。困っているよね。例えこの恋が叶わなくたっていいの。わたしのために涙なんて流してくれなくていいし、強い、特別な感情も抱いてくれなくたっていい。無理矢理、君の想いを奪いたくはないから。
『…ルフィ、大好き』
冒険に恋する君が好きだから。
「なんで泣くんだよ」
背中に回された手は、とても暖かかった。
恋をしてました
君の輝く光を遮りたくはないから
- - - - 20100426
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