海賊 | ナノ






ルフィと付き合ってから一ヶ月が経とうとしていた。あのルフィが恋愛感情が分かるだなんて、って思ってた。だけど朝起きたら、ご飯を食べるとき、遊ぶとき、寝るときにいつも


「好きだ!」


と言ってくれるのだ。嬉しい。他のみんなはニヤニヤした顔で見てくるわ、微笑まれるわで最初はとても恥ずかしかった。なんて直球な奴なんだろうと改めて思った。

だけど、それ以上はなにもないのだ。いやっ!別に求めてるわけじゃないの!そ、その、両想いってだけで幸せだし、それだけで十分…なはずなんだけど。

この間キッチンでぼーっとしていると、サンジくんに欲求不満かい?と言われてしまった。…欲求不満って。顔に書いてあったかな。だって、不思議なの。

ルフィに触れられたい、って思ってしまうの。

普通の恋人ならそれって普通のことで、当たり前なことなんだけど。

でもあのルフィが何もしてこないということなのだから、やっぱり彼の好きとわたしの好きには差があってそれ以上はきっと何も求めてはいないのだろう。わたしばっかりルフィに触れたいとか思ってしまっていることが恥ずかしくなった。

船尾のところでそんなことを考えていた。柔らかい風がわたしを通り抜けてゆく。気持ちいいな、次の島はどんなとこだろう。ルフィと一緒に出かけられるかな。


「名前」


その時、大好きな人がわたしの名前を呼んだ。それだけのことが嬉しくて声の方を振り向くと、相変わらずな表情でわたしを見つめていて微笑んでいた。


「なにしてんだ?」


隣までやってきてそう尋ねられて、風に当たってるのと言えば、そうかと言って笑った。

そして決まってこう言うのだ。


「名前、好きだ」


いつもみたいな太陽みたいな笑顔じゃなくて真面目な顔でそう言うからどうしても慣れない。これだから欲求不満だなんて大それたことも言えないのだ。


『わたしも大好き』


いつものようにわたしも同じ言葉を返したのに、今日のルフィはなんだか違った。ルフィの視線が下に向いていた。下というか…。勘違いでなければ、それはきっとわたしの口元を見つめている。

空気が静かすぎて唇になにか付いているだろうかと思っても自分の唇に触れることが出来なかった。手すりに乗ったルフィの手がだんだん近づいてきて、瞳は下を向いたまま。見下げた瞳が色っぽくて思わずどきっとした。心臓がどきどきと止まらなくって体はかなしばりに合ったかのように全く動けない。ああ、わたし。ルフィに触れられる。


「やっぱし我慢できねぇや」


触れたか分からないようなキス。唇を離してから、困ったように笑いながらそう言った。




テレパシー




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20100423