「おにィちゃんたち、そこまでにしときやー?」
「はぁ?」


現れたヒーローは、金髪オカッパの関西人。
その名も、平子真子。

『真…子…?』

まさか、助けに来てくれたの?
あの泣き虫くそガキだった真子が?


「さっきから見とったけど、おねぇチャン嫌がっとるやないか。ここらで引くのがいい男ってもんやで?」
「はぁ?なんだよお前…関係ねぇだろ!」
「そんな寂しいこと言わんといてやー。いい加減その手離しィ。」
「うっせーなァ…ちょっと黙ってろよ!」

あ、やばい。
あっちの人怒っちゃった!
真子殴られる…!

『真子、危ないっ…!』

真子を相手のパンチからかばおうと、真子の前に飛び出そうとした瞬間。


パシッ

という、乾いた音が聞こえた。



え?
なになに、何が起こったの?
パンチされたんじゃないの?

そーっと、相手の拳を確認してみると。
その握り拳は、真子の大きな手に止められていた。
真子、すごいじゃん!


「なっ…」
「ーエエ加減にしとき?これ以上騒ぎ大きゅうなるの嫌やねん。それに、…周りの目考えるゆうんも大事やで…?」

確かに、私たちの周りを見渡すと人が集まってきていて、こそこそ話に花を咲かせている。
金髪くんすごいだとか、あの子らはどうしようもないだとか。
それに気づいた相手たちは、
「…行くぞ」
と言って、バツが悪そうにどこかに消えていった。


あぁ、よかった。
これで一件落着…って、なんか周りで一連の騒動を見てた観客からから拍手が起こってる。
き、気まずいなぁ、これ…
そう思ったのは真子も同じみたいで、真子は少し困った顔をしながらわたしの腕をつかんで

「行くで」

と言って、走り出した。
そうだね、とりあえず今はこの場を離れたい。











「アホちゃうか」
『…スイマセン。』

あの場を離れて、わたしたちはベンチで休んでいた。
案の定真子はこの歳で迷子になったわたしに呆れてた。
まぁ、自分でも呆れてしまうくらいだからしょうがない。
完全にバカにされてる…そのことが、彼の表情からよく読み取れる。

『小学生ならな?迷子になるんもわかる。ココ広いしなァ。けどなァ…名無しはいったい何歳や?』
「17です…大変ご迷惑をお掛けしました…」

あー…恥ずかしい。
何年ぶりかに再会した幼馴染みに、なんでこんな失態を晒さなきゃいけないんだ…
てか、そもそもなんで迷子になんかなったんだ?
えーと………あ、


「そもそも、なんで迷子になんか」『あっ!!!!!』
「今度はなんや!」
『ストラップ…』
「はぁ?ストラップ?」
『そう、みんなでおそろいのもの欲しくて、ストラップを買おうとしてたら…みんな、いなかった』
「…ストラップみんな分買おうとして、ひとりでどっか行って迷子になったゆうんか?」
『う…だって、期間限定のやつで…9種類あったし…あそこの店にしかなかったし…』
「はァ…ホンマに、オマエは……」

真子が呆れたように大きなため息をついた。
あー、絶対怒ってる…
きっと真子だけじゃなくてみんなも怒ってるだろな…
だって遠足に来てまでみんなに迷惑かけてるんだもんね。
何やってんだ本当に……自己嫌悪。
さすがにへこむなぁ。


気がついたら、わたしもうなだれてた。
すると真子が突然立ち上がって、やばい、叩かれる!って思って防御体制を整えると、


「絶対そこにおれよ?さっきの店やな?」

と言って、走り出してしまった。

『え、ちょ、ちょっと真子ー!!?』

真子の姿を必死で目で追いかけるも、すぐに人混みに紛れてどこにいるかわからなくなってしまった。 なんだろ、何してんだろ真子…
まぁ、とりあえず叩かれなくてヨカッタ。







『あ、真子!どこ行ってたの?』

真子が息を切らしながら帰ってきたのは、あれから15分後だった。
いったい何してたんだろう。

「ほら、これやろ?期間限定のやつゆうんは」
『え?』

彼の差し出した手の中に包まれていたのは、私が迷子になった原因であるストラップだった。


『え、まさかこれ、買ってきてくれたの。』
「そや。全種類はあらへんかったから、俺とだけお揃いやけどな。そこは堪忍な。」
『うそ、ほんとに!?ありがとう!これ、本当に欲しかったの!あ…』
「…なんや?」
『これ買ってきてやったから、今度自分にも何か奢れよっていうメッセージ…?』
「アホか。そんなんちゃうわ。」
『えー!じゃあなんで買ってきてくれたの!真子が見返りもなしにこんなものくれるなんてありえない!』
「やかましいわ!俺はそこまでケチやないで!」
『じゃあなんでよ!』
「そ、それは…内緒や。」
『はぁ!?いいじゃん、教えてよーっ』
「内緒や内緒!追求するんやったらストラップ返してもらうで!」
『えっそれはやだ!うー…ケチー…』
「なんでもええやろそないなこと。ほれ、携帯貸しィ。付けてやんで」

くそー、けち。
…しかし、真子器用に付けるなぁ…
きっといろんな女の子にこうやって付けてきてあげたんだろうなぁ。
やっぱりモテる人は違いますねー。
悔しいな、あーもう、

『ハゲのくせにっ』
「なんやと?人が付けてやってるゆうのに」
『あれ?声に出てた?ごめんごめん』
「そういう問題やないやろ。付いたで、ほら」
『おー!やっぱ可愛い!今日だけイケメンな真子くん、ありがとーう!』
「ええで。常にイケメンな俺に感謝せなあかんで。」
『ー…?』
「そこ首かしげんなやボケェ。頷いとき。っし、そろそろみんなンとこ帰んで!」
『そうだね、帰ろー…ってちょっと、真子?何この手』

私の前には、真子の大きな手が差し出された。
何狙ってるんだ?

『何?どういうこと?』
「手繋がんかい。また迷うやろ?」
『いやいや、わたし17だよ?小学生じゃないんだから!』
「いやいや、さっきまで迷子やったのはどこの17歳や?」
『…ハイ。つなぎます。』

渋々、真子の手に自分の手を重ねる。
くそー、完全にバカにして。
すっごい見下され方。
けど、なんか。

「…怒ったり笑ったり、忙しい奴やな。」
『なんかさ、昔よくこうやって歩いたよね。懐かしいなー』
「そうやったな…せやけど、なんでも昔と同じとは限らへんで?」

真子はニィ、と笑ってそう言った。
と同時に、わたしの指に奴の指を絡ませてきた。

『えっ、えぇ?何してんの!?』
「恋人繋ぎや。ええやろ。」
『いやいや恋人じゃないじゃん』
「ええやんか。俺らの成長記念や。」
『意味わかんない上に真子と恋人に見られちゃうよ!』
「嫌なんかい、コラ」



真子と恋人に見られるのは不本意だけど、なんか、さっきより安心する。
人の手って暖かいなぁ。
でもこれを真子に言っちゃうと調子のるから、秘密にしとこ。








「お、みんないたで」
『あっほんとだ!みんな、ごめ…』
「うちの名無しに何手出しとるんやハゲェ!!」

ひよ里のサンダルが真子の顔面にヒットした。

「ホゲッ!何すんじゃひよ里コラァ!一緒に帰ってきただけやろ!」
「はぁ!?だったらなんで恋人繋ぎなんかしとるんや!この機に乗じて手ェ出したろ思たんやろ!」
「ちゃうわ!ただ手繋いでただけやろ…グハッ!」

二発目のサンダルがクリーンヒット。
あぁ、また始まった…
わたしはその二人の横で、ラブとローズに保護されていた。

「大丈夫?名無し、勝手にいなくなっちゃダメでしょ?僕ら心配したんだから」
『ごめんね、みんな。迷惑かけました。』
「そうだぜ、ったくよ、心配かけんなよ?って、お前何ニヤニヤしてんだ?」
『え?してないよ!…してる?』
「おぉ、なんだよなんか良いことでもあったのかよ?」
『んー…強いていうなら、意外なイケメンに出会ったことかな。』
「はぁ?なんだよそれ、」

うそ、ニヤニヤしてるなんて。
あーはずかし!

『そ、そんなことよりさ!そろそろ集合時間じゃない?ハッチ迎えに行って、行こうよ!』
「あぁ、そうだね。…ハッチより重症人がここにいるけど…まぁいいか。みんな、帰ろう。」

真子がひよ里にボロボロにされてる。
まぁ、わたしを散々バカにした罰ということにしておこう。









「よし、これにて解散!みんな、気を付けて帰れよ!」



ーなんだか今日の遠足は疲れたなぁ…
家帰ったらお風呂入って寝ちゃお。
あ、電車何時にあるかな?
携帯携帯っと…



ーキラ


取り出した携帯に付いてる可愛いストラップを見て、今日の出来事を振り返る。
あそこで真子がイケメンに見えたのは、遊園地マジックということにしておこう。
うん、そうしとこう。
そうしないとなんか、ムカつくもんね。
そう心に決めたとき、真子と目があった。



ーニィ



恋人繋ぎされる直前のニヤ顔と同じ顔をされて、不覚にもドキッとしてしまった。
真子、調子のって…悔しい。
けどまぁ、今日のことは感謝しておこ。
そんで。もったいないから誰にも言わないでおこーっと。

ストラップを見て、わたしもニヤっと笑った。



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(買ってきた理由…言えるわけないやろ。
あン時の名無しの泣きそうな顔に不覚にもドキッとして…なんて、格好悪うて言えるわけないやろ。
俺ン中だけにしまっとこ。)




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