雫、落ちる。


「毎日毎日雨やなー…」
『そうだねー…』

6月。
いわゆる梅雨の時期や。
雨降ると俺のサラサラ美髪が微妙に膨らむから嫌やねん。
イケメン真子が台無しやろ。
しかもこの時期は何の行事もあらへんからなー…
暇で暇でしゃアない。
紫陽花がきれいや、とか蝸牛が多い、とかそんな悠長なこと言ってられへんくらい暇や。
せやから、今日は名無しと廊下の窓から外の雨を見て暇潰ししとる。
ほんまに、どんだけ暇なんや。

「暇やなー…」
『そうだねー…』
「行事もあらへんしなー…」
「テストがあんだろうが」
『そうだねー…』
「そうやなー…」


…?


『「えぇっ!!!!??」』


「テスト、やと!?そんなん聞いてへんで!!」
『そ、そうだよ!そんなの知らないもん!』
「いやいや、今一週間前だぜ?教室見ろよ、みんな勉強してんじゃねえか。やってねえのお前らくらいだぞ?」
「う、嘘やそんなん!他にやってへん奴おるやろ!…せ、せや、白なんかやってへんに決まっとる!せやろ!?」

俺は期待を込めて白に同意を求めた。が、

「しんずぃー何言ってんの?やってるに決まってるじゃーん!」

それはきれいに打ち砕かれてしもた。

『真子、白はああ見えて成績優秀者なんだよ?常に50位以内には入ってるんじゃないかな?ちなみに、他の6人だってけっこう優秀なんだから…だから、わたし一人落ちこぼれてるんだよね…はぁ』

名無しは自分から話を出して勝手に一人で沈んどる。
しっかし白が50番てなんやねん…

「ローズとかが成績優秀なのはわかるで、せやけど白はギャップありすぎやろ…」
「でもハッちゃんには敵わないよー!すっごい努力家だもん!」
「アイツは本当に頭いいんだよなぁ。…そういや、今回のテストから赤点とった奴は夏休み補習じゃなかったか?」

『「えぇ!!!!??」』

『やだやだ!そんなの聞いてない!知らないもん!』
「俺かて聞いてへんわ!!なんでみんなそんなん知っとるん!?」
「バカ野郎、お前らがHRでギャーギャー騒いでる間に越智が喋ってたんだよ!聞いてねえお前らが悪いんだろ!」

拳西が青筋たてて怒り始めてもた。
なーんでこの歳になってまで友達に説教されんとアカンのや!
…せやけど補習は勘弁や…
俺の夏休みはもっと夢一杯なんやで。
例えば…運命のべっぴんさんと海で遊ぶとかやな。
クッソ、補習だけはどうにかして免れたいなぁ…
ーせや!

「有昭田先生ーっ!!」

俺は成績優秀者ハッチに泣きついた。
するとハッチは困った顔をして、
「ど、どうしたんデスか、真子サン」
と言ってきた。

「頼む!テスト出るとこ教えてくれ!礼は弾むで!」
そうでもせんと俺の夏休み台無しやからな…
するとみんなも俺に便乗して、
『あっ、真子ずるい!ハッチ、わたしも教えてほしい!』
「ハッチ、俺も今回やべぇんだけど…」
「アタシもや。助けてくれへん?エロ本買ったるで」
と次々に名乗り出てきよった。
ハッチはそれを見て少し呆れたみたぁな顔して、こう言った。

「み、みなサンそんなにまずいんデスか?…しょうがないですね、じゃあ…うちで泊まり合宿でもしマスか?」
「合宿?」
「ハイ、みなサンそれぞれ苦手科目の教科書持ってきてもらって、ワタシが解説しマス。今日の夜から来れマスか?」

俺にとってそれは、まさに天の声やった。

「おぉ、それはありがてぇな!行くぜ、俺は」
「俺も行くで!夏休みのためや!」
「鉢玄、アタシも行くで」
「ハッちゃん、白もーっ!!」
「僕らもいいかい?僕もラブも困ってるんだ…」
「わたしもわたしも!!絶対行くよ!」
「ウチもや!嫌ゆうても行ったるからな!」
「わかりマシタ。それじゃあ、今日の夜8時に身支度を整えて、勉強道具を持って、真央駅の改札で待ち合わせしマショウ。」

よっしゃあ、これで俺の夏休みは安定や。
しかも勉強ゆうても9人で泊まんのなんか初めてやしなァ。
若干楽しみや。
しっかし、俺の場合全てがわからへんのやけど、どの教科書持ってったらエエんや?
全部持ってきゆうことか?

『ねぇ真子、わたし全部わからないんだけど教科書全部持ってかなきゃダメかな?』

…仲間がおったわ。
それもなかなかの阿呆がな。








「みなサン来ましたね?じゃあ、家にいきまショウ」

予定通りの時刻に集まった俺らは、ハッチの家へ向けて出発。
結局俺と名無しは全教科書の半分の量をそれぞれが負担して持ってこよゆうことになった。
それでもやっぱ荷物は俺らがダントツ多い。
次に多いのはリサやろか。
リサの鞄も本で重そうやな…
白はめっちゃ身軽やなァ。
「リサ教科書何冊持ってきてん?」
「2冊や。」
「2冊ぅ!?ほななんでそんな重そうなん!?」
「あぁ、これは保健の教科書や。真子も読むか?」
「読まへんわ」
「ハッ!真子は相変わらずムッツリやな!」
「誰がムッツリやねん!阿呆!」
「えぇっ!しんずぃームッツリスケベなのっ!?やだーっ!!」
「白!俺は違うで!」

…ホンマにこんなんで勉強なんかできんのか…?



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