いくらイベントだからといって戦いに手を抜くつもりはないし、相手が柱の男や吸血鬼なら尚更だ。
だから傷も絶えず、精神的に辛い時だってある。

因縁のあるワムウとの戦いを終えて、何とも言えない気持ちを吐き出すかのようにため息を吐けば、目の前に真っ白なタオルが差し出された。

「お疲れ様です」

「…なまえ、ありがとう」

お礼を言えば「お仕事ですから」と笑顔を見せる。
冷たく濡れていたタオルで顔を拭えば、冴えない思考がスッと晴れていくようだった。

「疲れてます?」

「…いや、平気さ。君の心配は嬉しいけどね、シニョリーナ」

「そんな…えっと…」

日本人らしく顔を真っ赤にするなまえに「恥ずかしがる君も可愛いよ」と言えば、両手でその顔を隠してしまう。
顔を見せてくれと追い打ちをかければ「シーザーさんってば…!」と怒られてしまった。

「…はぐらかさないでください」

「そんなことは」

「頼りないですか、私。…そりゃあ、確かに強くはないですし、勇気もないし、…でも皆さんのために頑張りたいと思ってます」

そう言葉を続けるなまえの目は本気だ。

俺だって、なまえをはぐらかしているわけでは無い。
だが、彼女を俺個人の勝手な問題に巻き込みたくはないし、そして俺の宿敵である柱の男や吸血鬼と仲良くするなまえを見て…

「まるで嫉妬じゃあないか…」

「え?」

あいつらより俺と一緒にいて欲しいなんて、まるで恋でもしたような感情だ。
この俺としたことが、そんなことにも気付けなかったなんて。

「なまえ、…ありがとう」

「よくわかんないですけど…どういたしまして?」

「ハハッ、…それから、これから覚悟しておけよ」

「えええ…なにをですか?」

「そうだな、…こういうことかな」

なまえの少し荒れた手を取りその指にキスを落とせば、またなまえの顔は真っ赤に染まった。

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