疲れた身体でのろのろと作ったハンバーグは少し焦げていて、専業主婦はまだ先だな、と思った。
大学を卒業して私は一般企業に、ジャイロは弁護士の見習いとして知り合いの事務所に就職した。
そしてその弾みみたいなもので籍もいれてしまった。
大学時代から同棲していたし、お互いに働くから金銭面にも問題はなく、両親も相手がジャイロならと何も言わなかった。
二人の新居は広くも狭くもないアパートで、式はまだ先。
今は実感が湧かないくらい幸せに浸かっている。
しかしこのハンバーグは許されない。
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玄関からガチャガチャと鍵を開ける音がした。
だが残念、私が帰宅して鍵は開いたままなのでドアを引くとガチッと扉が揺れただけで終わる。
ゴメンねと心の中で謝りながら内側から鍵とドアを開けると、何か言いたそうなジャイロが立っていた。
「おかえり」
「あのなァ…一人だと危ないからちゃんと戸締まりするように言ったよな?」
「おかえり」
「…ただいま」
ジャイロは自分が身につけていたマフラーを私の首にぐるりとかけて、頬にただいまのキスを落とした。
「今日の晩飯は?」
「ハンバーグ」
「おー、そりゃ楽しみ」
「あはは、ちょっとこげちゃったんだ」
「…」
「ごめんね」