ジョジョ | ナノ
熱帯夜、暑さで目が覚める。
カーテンの向こうから雨が地面を叩く音が静かに聞こえてきて、蒸し暑さの原因だと思うと涼しいその音も恨めしい。
肌に纏わり付いたシーツを退けて、隣で寝ているジャイロに気付かれないように身体を起こす。
地肌が汗で濡れ、毛先は首筋に張り付いてとても気持ち悪い。
手櫛で髪を梳き空気を入れても意味は無く、汗と湿気で気持ち悪いキャミソールを脱いでみてもまだ暑い。
夏の夜はこんなにも厄介なものだっただろうか。
よくよく見てみれば、ジャイロも同じくらい汗をかいていた。
私よりも長い髪を梳き、汗でべたついた筋肉を撫でると、その逞しさに胸が高鳴る。
このまま熱中症になりたくないので、よいしょと彼の身体を跨いでベッドの上からフローリングに降りる。
ギシギシとスプリングが嫌な音を立てたので、ジャイロが起きてしまうのではと思ったが、身動ぎしないので、胸を撫で下ろし部屋の隅に置いてある扇風機の首をベッドに向ける。
風を調節して部屋全体の空気が籠らないよう首を振らせて、それからまたジャイロを跨いでベッドに戻る。
シーツを被り直して横になれば、寝ているはずだったジャイロの腕が伸びてきて、そのまま身体を引き寄せられた。

「サンキュー」
「起こした?」
「いや、寝苦しくて起きた」

寝苦しくて、と言う割にはやたらとくっついてぎゅうぎゅうと私を少しも逃がさぬよう抱きしめる。
背中に回した手で寝る時用のスポーツブラのゴムと肌の間に指を入れては、弾いて、もう片方の手では先ほどとは逆に私の湿った髪を撫でている。

「脱ぐほど暑かったか?」
「ベタついてヤだったの」
「…へえ?」

扇風機を回したというのに、こうくっついていては暑い。
離れようと胸板を手で押しても、逆に背中を押されて内側に押し込まれ、鼻が潰されそうだ。
このまま、ジャイロの体温と私の体温が溶け合って、私がジャイロに吸収されて一つになってしまうのではないか、なんて思ってしまう。
それくらい、触れ合ってても何も違和感がないくらい同じ体温を共有していた。
けれども違うのはその匂い。
香水やシャンプーではない、人それぞれ特有の匂いが私とジャイロでは、おそらくまったく違う。
不思議だが、初めてこの匂いは嫌ではないと思えたのがジャイロだった。
すん、と鼻を鳴らす。
雨の音以外は何もないこの室内ではその音も聞こえたようで、「どうした?」と私の頭をやわやわと撫でる。
暑いはずなのに、瞬きが遅く少なくなる程に心地よくて、まるでジャイロ自身が魔法の枕ように私を眠りに誘った。
それに素直に従って、今度は私がジャイロをその身体に取り込むよう抱きしめた。

「ジャイロ」
「ン?」
「朝までゆっくり眠れそう」
「オレもだ」
「おやすみ」
「おやすみ」

ジャイロの脚と脚の間に私の片脚を潜り込ませて全身ピッタリとくっつけた後、私はすぐそこまで来ている睡魔に身を委ね、意識を手放した。
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