「箸の使い方も随分うまくなったね」
ディエゴと暮らすようになって半年が過ぎた。
この冬の寒い時期には、やはり鍋がいいということで、土鍋と具材を買い込んだ。
そしてディエゴが綺麗な箸使いで豚肉を口に運ぶのをみて、その似合わなさから思わず声が出た。
「名前のためなら何だってやってやるさ」
そうやって笑うディエゴは憎たらしいほどかっこいい。
「むかつく」と言って彼のお椀の中にしいたけを放り込めば、渋い顔をした。
ディエゴはそのしいたけを箸で摘み、私のお椀の中に移動させようとしたが、「私の手料理食べられないの?」と言えば眉間のシワを増やした。
まさかこのセリフが効くと思わず、すぐに「冗談、冗談だって」と訂正する。
「私が食べるから、こっちに入れなよ」
そう言って自分のお椀をディエゴに向けたのだが、意固地になったようでパクリと一口で食べてしまった。
それから数回だけ噛んで、お茶で流し込んでる。
「そこまでしなくても良かったのに」
「食べて欲しかったんだろう?」
「ディエゴのそういうところ、嫌いじゃないよ」
「素直じゃないな」
「…もう、好き」
ニヤニヤとこちらを見てくるディエゴを無視して、人参をかじる。
「好き」や「愛してる」の言葉を言うのは嫌いではないが、いつまでたっても苦手だ。