ジョジョ | ナノ

ディエゴとの生活も四ヶ月目を迎えた。
一緒に生活していれば、もう最近では彼に関する新たな発見が少なかったのだが、季節が変われば話は別だ。
朝食をとりながら二人で見ていたテレビでは、地方局のアナウンサーが秋の訪れを笑顔で話していた。

秋は楽しみは沢山ある。
過ごし易い気候に移り変わり、美味しいものも沢山。
けれどもそれらを悠長に楽しんでいる暇はなく、私は毎日大学に通わなければならない。
夏休みが終わってからは、ディエゴの機嫌が悪くて大変だった。
なんとか宥め、デートに出掛ける回数を増やすことで納得してもらい、それから約束もしていないのに、毎日迎えに来るようになった。

話を戻す。
今日は平日で、大学に行かなければならないが、授業は早く終わった。
なので大学の入り口前でディエゴと待ち合わせ、カメユーデパートへ行きディエゴの秋服を買いに行こうという約束をした。
顔は良いのに服装への興味が薄いディエゴは、承太郎さんにいただいた服と、私が買い足した地味な安物をずっと着まわしている。
しかも、地味な安物を特別がっているので、これはいけない、もったいないと洋服にお金を出す決意をした。

講義が終わってさっさと教室を出て、ディエゴの待っているだろう一階のエントランスを目指す。
階段を駆け降りて見つけた彼は、男子生徒からの珍しいものを見るような視線、そして女子生徒の好意を向ける視線を独占していた。
何時ものことだが、やはり目立つ。
そしてこの視線を押し退けてディエゴに話しかけるのが恥ずかしく、また私以外がディエゴに好意を向けることに少しだけ嫉妬してしまう。
そんな気持ちを隠してディエゴの目の前に立てば、ディエゴは少しだけ笑って私の手を引く。

「遅い」

「走ってきたのに、ひどくない?」

「走って?急いで来たのは嬉しいが、階段で転んだら大変だろう」

「そんなドジしません」

心配性だなあ、と言いながらディエゴと手を繋ぎ直せば、彼は満足そうに手を握り返した。



カメユーデパートを選んだのには訳がある。
デパートなら良い商品を取り扱っているし、私が選ぶよりも店員さんに任せればきっとディエゴをおしゃれにしてくれるからだ。
洋服売り場についてから適当に服を物色し、話しかけてきた女性店員さんに「彼に似合う服を探しています」と一言伝える。
そしてすぐ、ディエゴを見ても笑顔を崩さずに、あれこれ沢山の服を持って来てくれる店員さん。
身内贔屓になるが、イケメンという言葉が似合うディエゴを見ても社員としてのまっすぐな対応をしてくれる彼女は相当な優秀社員だ。

「どれも似合うから困るなあ」

「名前が選んでくれるなら何だって着るぜ」

「少しは好みを教えてよ」

ひとつひとつディエゴの身体にあわせてみるが、店員さんのセンスがいいのか、ディエゴのルックスがいいのか、全てが似合うようにみえてしまう。
こうなったら私服のみならず、スーツなどいろんなものも着せてみたいと思ってしまう。

「こうなったら、全部買おうか」

私の発言におどろいたディエゴは、「そんなことして金は間に合うのか?」と心配してきた。
「大丈夫だよ」と返して洋服全てを抱えてレジへ向かい、支払いを済ませる。
あまり大きな声では言えないのだが、私のスタンド能力を応用して、毎年一回、一等までとはいかないがそこそこの大金を宝クジで当てているのだ。
それは親にも内緒で、ディエゴにもまだ内緒だ。
買い物をして満足した私は、ディエゴの手をとり「帰ろうか」と声をかける。
しかしディエゴはすぐには動かず、しばらくして私の手を引いてズンズンと歩き出す。
どこに行くのかと思えば、辿り着いたのは女性向けの洋服売り場。

「名前のも買っていく」

「私の?いらないよ別に」

「オレが選びたいんだ」といってワンピースのコーナーを熱心に探る。
ディエゴの目が真剣なものだったので、なにも言い返せずに、黙って彼の横に控えて立つ。
水色は違う、だとか、これじゃあない、だとか色々と悩みぬいた果てに、ディエゴが選んだのは緑色のアクセントがきいたワンピースだ。
さっそく私がレジに持って行こうと思えばその行為も止められ、ディエゴがさっさと支払ってしまった。

「次のデートではこれを着ろよ」

「…ありがと」

おそらく、叔父さんとのころで働いた給料で買ってくれたのだろう。
そんな給料を私のために使ってくれるディエゴが愛しくて、人目を気にせず腕にぎゅっと抱きついてみた。

「今日は美味しいご飯つくるね」

「スキヤキ、か?あれが食いたい」

「うーん、じゃあ、それにしよう」


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