珍しくジョニィが名前と同じ時間に起きたので、一緒に朝食の準備をすることになった。
名前がキッチンでトーストとスクランブルエッグを焼き、ジョニィがコーヒーを淹れる。
ジャイロから美味しいコーヒーの淹れ方を教えてもらったらしく、最近になってコーヒーを淹れる担当はジョニィになった。
そのコーヒーの芳ばしい香りにうっとりしながら、名前も温まったフライパンにバターを落とす。
スーッと息を吸い込めば、また違う芳ばしさが胃袋を刺激した。
火を弱めて溶いた卵を流し込み、熱々のフライパンの上で、菜箸で更に溶きほぐす。
柔らかすぎず固すぎずのタイミングで火を止め、フライパンの上で半分に割って皿に取り分ける。
「名前、早く!」
余程お腹が空いたらしいジョニィの声が飛んでくる。
「はーい」と間延びした返事をして、タイミングよく焼けたトーストとトマトを盛り付けて、皿を持ってダイニングテーブルに向かった。
もともとこのマンションは、ジョニィの父が彼に買い与えたものだった。
名前は詳しく聞いていないが、父とは上手く行っていないらしく、ジョニィが家を出るならと家の手配と仕送りは惜しまないでくれている、らしい。
なのでバリアフリーも行き届き、お洒落なつくりで、住み心地がいい分購入費もバカにならない値段、らしい。
ジョニィが話したがらないのなら家族のことは聞かないし、お金のことについては怖いから聞かないことにしている。
今が幸せならそれでいいじゃないか、とフォークを並べながら名前は自分に言い聞かせた。
ジョニィはもうテーブルに着いていて、スクランブルエッグのバターとケチャップの香りにうっとりしていた。
「じゃあ、いただきます」
「いただきます」
二人で手を合わせて、また同じタイミングでトーストにかぶりついた。
「今日の予定は?」
名前がジョニィに問いかければ、「いつもと変わらないよ」とジョニィは返す。
「四コマで終わって、そのあとジャイロの予定に付き合うつもり。でも名前が迎えに来たら抜け出して一緒に帰るよ」
「それなら、ジャイロと一緒に帰ってこればいいのに」
わざわざジャイロとの予定を抜け出してくることはないだろう、と名前がそう言えば、ジョニィは「それはダメ!」と怒り出す。
「名前と一緒に居る時間を削るなんてしたくないんだ!ただでさえ、名前が仕事についてから時間がなくなってきてるっていうのに…」
「あー…」
名前はジョニィより一つ年上で、更に短大生だった。
なので四大生のジョニィや同い年のジャイロとは違って、社会に出るのが早かった。
「それは、仕方が無いことじゃない」
「わかってるよ。だから、仕事辞めてよなんて言わないんじゃないか…。だからせめて一緒に居る時間をながくしたいだけなんだ」
コーヒーカップに唇を当てたまま、唇を尖らせるジョニィが可愛らしい。
名前は「わかったよ、いつも通り迎えに行くね」と降参し、ミニトマトを頬張った。