チチチ…、と雀たちの会話で目が覚めた。
名前は凝り固まった筋肉を解すようにグッと伸びをして、隣でスヤスヤと眠るジョニィを起こさぬようにベッドを抜け出そうとした。
しかしそれは名前の腰に回された腕によって阻まれる。
「…可愛い顔して力は強いんだから」
名前が独り言を呟いても起きる気配を見せない。
身体を捻って、ベッド脇に置いている目覚まし時計を手に取れば、まだ起きなければいけない時間まで十分ほどある。
それならば、この無意識の甘えん坊に付き合ってあげるのも悪くはない。
もう一度暖かい布団に潜り直し、ジョニィの背中に腕を回す。
どうしてか、彼は足の怪我をして長いのに上半身の筋肉は衰えない。
鍛えている訳でもないらしいので、体質なのだろう。
羨ましいなあ、とその凛々しい背中を撫で下ろし、脇腹をつまんでやる。
上半身はすごいと言っても、腹筋はそこまでないのだ。
そんなところがまた可愛らしく、つい笑みがこぼれてくる。
「ン…ッ」
「ん?」
「名前…何してるんだ…」
掠れた声でジョニィが名前の手を止める。
何時もの通る綺麗な声ではなく、起き抜けの少し低くて掠れた色っぽい声だ。
可愛さも色気も、もちろん格好良さを併せ持っていて、時々ずるいと感じてしまう。
意味もなく頬を摘まんでみれば、「やめてよ」と怒られた。
「…でも、名前からそうやって触ってくれるのは、珍しいね」
「そうかな」
「ぼく、今凄く嬉しいんだ」
普段は見せない笑みを浮かべてから、アメリカ人らしく名前の両頬にキスを落としてから更に力強く抱きしめた。
その時、けたたましい音が頭上で鳴る。
先程解除するのを忘れていた目覚まし時計だ。
「お時間です」
「まだ起きたくないのに…」
「ダメ。私は会社、あなたは学校」
不機嫌なジョニィにキスをして、 「おはよう」と名前は笑う。
「おはよう、名前」
そんな可愛い顔をされたら起きるしかないじゃないか、とジョニィはまた不機嫌になった。