ジョジョ | ナノ

人に近寄られること、触れられることを名前は異常に嫌がった。
そうなってしまった原因はわからないのだが、名前は肩が触れ合うような距離に他人を入れることなく、それを悟られぬよう、何も問題無く生きてきた。

もともと、名前はディエゴと面識があった。
ディエゴがまだ無名の騎手であった時代から、名前の両親が営んでいた靴屋の常連だった。
それは彼が有名になってからも変わらず、名前の両親は常連である彼の活躍を、また彼自身ことを誇りに思っていた。
しかし、名前は違った。
事あるごとに名前に話しかけ、隙あらば触れようとしてくる彼のことが好きにはなれなかった。
悪い人間には見えないが、いい人間にも見えない。
そんなディエゴだからこそ、余計に嫌だったのかもしれない。
そして、それは名前の両親が亡くなり、店を受け継いでからも変わることはなかった。

しかし彼は、今名前の家の寝室で、ベッドに腰掛ける名前の下に跪いている。
彼を寝室に招いたのには理由があった。
一階にある店の掃除をしていた時に足台から落ちてしまい、足を捻ってしまったのだ。
そこにタイミング良くディエゴが現れ、店を閉め介抱してくれた。
歩くことすら出来ない痛みだったため、どうしてもディエゴに触れなければならなかったのだが、これは仕方が無いことだとして彼に抱き上げられることに文句は言わなかった。
潔癖症や異性恐怖のような病がある訳ではない、ただ嫌なだけなのだ。
そして、痛みや症状を聞きながら丁寧で適切な処置をしてくれたディエゴに御礼を言い、彼には部屋から出て行ってもらう予定だった。
しかし、ディエゴは名前の足元から動こうとはせずに、カーディガンを脱がせてた。
あまり見ることが出来なかった素肌を晒した名前を、ディエゴはギラギラした目で名前を見上げる。

「どうしてオレを避けようとする?そもそも、どうして他人に触れることを躊躇う?」

「…よけて。離してよ」

「嫌だね。お前のその態度が最高に、…気に入ってるんだ」

ディエゴは名前の手をそっと取り、そのまま人差し指を舐める。
そして靴を傷付けぬよう綺麗に切りそろえられた爪、すらりとした指先、薄く骨張った甲にキスを落としていく。
その手を引っ込めたかったのだが、力強くディエゴに握られていたために敵わない。
鳥肌が立つことはないが、どうも擽ったく胸もやけに苦しい。

「…やめて」

「やめて欲しいのなら、頬を叩くでもすればいいだろう」

「…」

「お前は触れられるのが嫌なんじゃあなくて、触れることが怖いんだろう」

ジワジワと追い詰めるような尋問に眉間にシワがよる。
ベッドの傍に手をつき、二の腕、肩、首筋と舌を這わせ、最後に頬に噛み付くような口付けをする。
名前はディエゴに言い返すことが出来なく、さらにその行為を止めることすらできなかった。
ディエゴはそれに気を良くしたのか、名前の髪を指に絡ませ撫で回し、香水の微かな香りを楽しんだ。

「好きだ」

ディエゴは名前に囁く。

「嘘でしょう?わたしを口説いても、何の得にはならないのに」

「そうだな。でも、お前が欲しいんだ、名前」

「ずっと欲しいと思っていたものが手に入るチャンスを逃すものか」とギラギラした目で笑って、そのまま名前を押し倒した。

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