彼に無条件に愛されるというのは無理だろう、というのが私の考えだ。
人の上に立つべき存在であり、居場所のない異質な私たちを認めてくれる、そして何より圧倒的な強さ。
認めてもらえただけでも幸せなのに、何故私は今、彼のベッドで腕の中に居るのだろうか。
立派な胸板を枕にし、スヤスヤと眠るDIO様を眺めることを強いられていた。
とっても逃げ出したいのだが、ゴツゴツした腕に退路を阻まれている。
「…にしても、無防備な寝顔」
いくらこの屋敷にスタンド使いが居て、同じ部屋に私がいるからと言ってもここまで安眠するだろうか。
ホル・ホースのように裏切る輩が居るかもしれないし、いつジョースター一行が攻めてきてもおかしくはない頃だ。
本当に熟睡しているのか、試しに頬を擽ってみる。
それでも起きない。
調子に乗って瞼をなぞってみたり、鼻を押してみたりしたが、それでもやっぱり起きない。
更に唇をなぞって居た時に、カプリと食べられてしまった。
「ぎゃ!」
「このまま食べてやってもいいが、どうする?」
「ちょ、ちょっとだけでお願いします!」
「フフ、拒否はしないのか」
「あっ」
「バカなヤツめ…」
DIO様はニヤリと笑って私の人差し指をペロリと舐めたあと、解放してくれた。
「いつから起きてたんですか」と問えば「お前が顔をなぞり始めた辺りから」と返され顔から火が出そうになる。
「なかなか血色の良い顔になったではないか」
「これは!その…不可抗力ですから…!」
「気が変わった。やはり少し血をいただこう」
「痛いのは嫌ですってェ…!」
「大丈夫、痛くはしないさ。それ以外はわからんがな…」
「なにそれ、ァ、いっ…!」
首筋に歯を立てられ、皮膚に傷がついた感覚が鈍く伝わってくる。
血が滲んだであろう頃にねっとりと舐められ、「なかなか美味いではないか」となかなか喜べないお褒めの言葉をいただく。
「このままでは痛いだろう?止まるまで舐めてやろう」
「痛くてもへ、平気なので…ひい!」
「…もう少し色気のある声は出せんのか」
「すみません〜…」
「まあいい、また今度デザートにでもいただこう」
ククッと人の良さそうな笑みを浮かべてDIO様はまた眠ってしまった。