ジョジョ | ナノ


ようやく砂漠地帯を抜け小さな田舎町に着いた。
名前は必要な物を買い足して酒場で空腹を満たした後、すぐに街を出るつもりだった。
しかし酒場の店主から面白い情報を貰ったため、踵を返して小さな宿へと向かった。
宿主はレースの参加者にはコロコロと態度を変える。
愛想の良い笑顔で、
しかし申し訳なさそうに「今宵は満室でして」と手をこねる。
名前は私も他人からはこのくらいの胡散臭さで見られているのか、などと思いながら「相部屋でもいいから宿は取れないか」とこちらも申し訳なさそうに頼んだ。
演技力では、名前の方が一枚上手だった。





「君は、ええと、ホット・パンツで間違いはないかい?」

「ああ」

ホット・パンツはベッドに腰掛けたまま名前を見る。
余裕に見せつつ、少しの警戒を忘れないその姿勢に名前は感心した。

「すまないな。この辺りでの野営は不安でね。私は名前・名字、フランス出身だ」

名前が手を伸ばせばホット・パンツもその手を取る。
こうして握手がちゃんと成立したのはファーストステージ開始前に会ったマウンテン・ティム以来だった。

さて、しかしどうしたものか。
名前は自身の性別をどちらにするか考えていた。
このホット・パンツという男、名前から見ればどうしたって男に見えないのだ。
鍛えられた身体ではあるが細身、中性的な顔つきで高くも低くもない身長。
レースの参加名簿には性別などの記載はないため、『どちらとも言えない』のだ。
あまりに名前か考え込んでいたため、じいっと観察していたのがホット・パンツにばれてしまったらしく、大きなため息をつかれた。

「視線がしつこいぞ、名前」

「ん!それは失礼。いやね、あまりにも君が美しいから」

「同性愛の趣味はないし、神に仕える身なのでな」

「おお、それは初耳。というか、君はやっぱり男なわけ?」

「どちらでもいいだろう。お前だって、どちらでもなさそうな顔をしてる」

鋭いな、と名前は思った。
そして、ホット・パンツの性格も少しだけ分かったような気がした。
お堅く見えて、実は優しい。
こういった空気を持てるのは、大抵下に弟か妹がいるタイプだ。
名前は硬いベッドに寝そべり、再度ホット・パンツを見た。

「なあ、君は、女だろう」

「…どうして」

ホット・パンツの眉がピクリと動いたのを名前は見逃さなかった。

「そこなんだよ。そこで聞き返すのが、少しおかしい。曖昧にするのだっておかしい。こんな過酷なレースに参加する男は、自分の男としての能力に自信のある奴らばかりだ。そんな奴にお前は女だろうなんて言ったら、殆どの場合ブチ切れるだろうね」

硬いとは言っても久々のベッドだったため、名前は説明の最中に二度ほど欠伸をした。
ホット・パンツは相変わらず腕を組んでいる。

「そーいうキャラで突き通すのも悪くないけど、やっぱり否定はちゃんとしておいた方が得だね。まあ、君が性別を偽る気があるなら、だけど」

「そういえばどちらとも言っていないね、君は」と名前がブーツを脱いでベッドの傍にだらしなく投げ捨てる。

「…口が達者すぎるな、お前は」

ホット・パンツは今までの名前の言葉に否定も肯定もせずに、ただそれだけを呟いた。

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