ジョジョ | ナノ
 大学二年生になって初めて眼鏡を買った。黒縁で少々度のキツイ、なんてことない平凡なものを。

 私の視界はもう何年も前からボヤけていた。暗闇で本やゲームなど当たり前でアウトドア派ではない私の目は、高校入学を境にどんどん悪くなっていった。

 しかし、今までそう不自由は感じていなかった。大学の講義は前の席を取れば黒板の字は難なく読めるし、仲のいい友人ならボヤけた視界を持つ私でも簡単に見つけられていたからだ。必要ない物を買う余裕は、ない。

 じゃあ何故、今頃になって眼鏡を買ったのか。答えは勿論、必要になったから。まさか講義中の学生の態度が悪いから、とかそんな情けない理由で必修科目の座席が学籍番号順になるなんて、全く予想していなかったのだ。運悪く一番後ろの席になってしまった私は全くと言っていいほどノートが取れず、その後に同じサークルに入っているジャイロに渋々写させてもらった。毎回彼を頼る訳にもいかないので、眼鏡の購入を決意し、冒頭に戻る。

 視界は思ったよりもクリア。私の見ていた世界がどれだけボヤけていたのかをレンズ二つに見せつけられた気分だ。休講のため一緒に居たジャイロは眼鏡をかけた私がどんなもんかと覗いてくる。鬱陶しい。

「それにしても、ジャイロってそんないい男だったの」

「おたくはイケナイ先生みたいだぜ」

「やだ。教員目指してるのに」

「ニョホホ」と歯を見せて笑うジャイロの頬をとても弱い力でパチンと叩く。知的に見える、だとか、大人っぽい、みたいな感想を待っていたのにそれか。ため息を吐いて、周りに散らばる用紙を纏めた。そう、作業中である。

 新入生の呼び込みを担当することになった私とジャイロは、空き講を見つけては配布用のチラシ製作に励んでいた。募集するための文章を私が考え、ジャイロがそれをA4のコピー用紙にイラストを添えて書き込んでいく。私は暇を持て余していた。
 私たちが所属する乗馬サークルは、伝統と歴史こそあるものの新入部員は年々減少するばかりであり、去年は廃部の危機にまで陥ったらしい。今後そのような危機が訪れないとも限らない訳で、予想以上の責任の重さに何度かめげかけた。けれどもジャイロが相手だから、なんとかやってこれたのだ。

「ね、人来るかな。これで」

 「まあ、一人は来るぜ。確実に。あとは名前の頑張り次第だなァ〜」

「え?」

「配るのは名前の仕事、ってこないだ満場一致で決定した。俺の中で」

「ばか。一緒にやるかジャイロ一人でやるか以外認めないから」

「早く完成させて」とジャイロの背中を叩いて完成を急かした。

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