「ムカデ屋」がなぜか爆発して、私のスカートも爆発してしまったらしく、無惨な状態で戻ってきた。
お母さんからは可哀想なものを見る目でみられたし、今も友人に可哀想なものを見る目で見られてる。
そしてついでにため息もつかれた。
「あんたのそ今年の運のなさは何なんだろうね。変な漫画家にこき使われたり、スカート爆発したり、彼氏ができなかったり、その他いろいろ…」
「スカートだけだよ!彼氏とかまだ考えたことないし、露伴先生は別に悪い人じゃないし…」
「あれ、肩持つようになったの」
「肩持つっていうか…この間プレゼントまでもらっちゃったし」
これだよ、と露伴先生からもらったネックレスを首元から引っ張り出して見せれば、友人は驚いた顔をしてそれを見つめていた。
「よかったね」だとか「かわいいね」とかそういった感想が欲しかったのにそんな反応とはがっかりだ。
「あんたさ、…男の人がアクセサリーを贈る意味わかってる?」
「え?いや…」
「だろうと思った!」
ズズズッと勢いよくアイスコーヒーを飲み干してから、友人は「いいこと?」と私を睨む。
「男性がアクセサリーを贈るっていうのはね、相手を自分で染めたいって意味なの!わかる?最悪脱がせたいって意味なの!」
「ヒィ…!」
「うそ、誰も脱がしはしないって」
「…だまされた」
「だまされる方が悪いよ、こんな嘘で。…でもね、意味があるのは本当なんだから気をつけなさいよ」
そんな意味があるようには見えなかったのだけど…と反論しても今の友人には通じなさそうだ。
大人しく「はぁい」と返事をして私もオレンジジュースを飲んだ。
バス停で友達と別れ、私は目的もなく商店街を寄り道していたら露伴先生や東方君たちが居た。
何かを探しているみたいで、どっちに声をかけようか迷いに迷い、露伴先生に声をかけてみたら「赤ん坊の声を聞かなかったか」と聞かれた。
「赤ちゃん…?」
「ちょっと耳を貸せ」
なんだなんだと露伴先生の隣に移動して髪の毛を耳にかければ、本当に小さな声で「ジョースターさんの赤ちゃんがスタンド使いで、透明になって消えたんだ」ととんでもないことを言い出した。
思わず声をあげそうになったが、露伴先生に口を押さえられてモゴモゴとしか喋れない。
「お前がスタンドのことを知っているのがバレたら大変じゃあないかッ!」
「ンンーッ!んっ!」
上手く喋れないので、手を合わせて必死に謝るとやっと解放してもらえた。
流石に騒いでいたのは東方君やジョースターさんにも聞こえたらしくこっちを見ていたので、挨拶代わりに手を振る。
「…あ、露伴先生!わたしいいこと思い付きました」
「いいこと?」
「耳貸してください!」
少し屈んでくれる露伴先生の耳の近くに手を当てて話し始めようとすると、露伴先生がビクッとする。
「え、耳弱いんですか…?」
「うるさいな…!早く話せ!」
露伴先生の逆ギレに笑いたいのを堪えて、「露伴先生なら赤ちゃんを見つけられますよ」と話す。
「露伴先生の、スタンド?は人に思い通りの行動をさせられるんでしょう?なら、透明な赤ちゃんが見えるというようにすればいいんですよ」
「…成る程。試す価値はあるな」
露伴先生は少し考え込んでから、ジョースターさんに話しかけ、無事に赤ちゃんは見つかったみたいだった。
一緒に喜びたかったけど、見えない振りをしておけと露伴先生に言われたのでまた挨拶だけして東方くんとジョースターさんと別れた。
露伴先生ももう帰るようで、バス停で二人バスを待つ。
「なんとなく分かってたんですけど、東方くんもジョースターさんも、…他にもまだ沢山特別な人はいるんですね」
特別な能力を持った人にこう沢山あってしまうと、どうしようもないのに劣等感を持ってしまう。
こうして露伴先生と仲良く普通に話していても、私と違うと一度思ってしまうと勝手に距離を感じてしまうのでつい口にだしてしまった。
露伴先生の顔を覗いても、こっちを見ず真っ直ぐ前を向いているので何もわからない。
怖くなって「なんでもないです!」と戯けてみたが、「本当にそうなのか?」と言われてしまえば正直に答えるしかない。
「ずっとなんです。私、ずーっと自分に自信がなくて、その上特別な人がいるってなったら、…なんて言ったらいいのかわかんないですけど、私はなんにも出来ないなって思っちゃって」
えへへ、と笑って誤魔化したらデコピンされた。
それからデコピンしたところを大きな手で優しく撫で、その手で私の顎をあげて目線を合わせる。
そして真剣な目で口を開いた。
「他人なんだから違うのは当たり前だろう。僕と名前、スタンド抜きにして考えても、性別は違うし僕は絵が得意だが名前は下手くそ、反して字はお前の方が上手い。それに僕には名前が特別だったから、…言いたくなかったがな、そばに居てもいいのは名前しかいないと思って声をかけたんだ」
「露伴せん、せ…」
「…喋りすぎた。僕はタクシーで帰るからな」
「明日ちゃんと家に来いよ」とだけ言い残して、露伴先生はタクシー乗り場の方に去って行った。
言い逃げなんでずるいじゃないか、と言いたくてももう露伴先生は遠いので、別の意味でモヤモヤしたままバスを待った。