薄いカーテンの隙間から差し込む暖かな太陽の光で目が覚めた。
まだ眠っていたいが、隣に居たはずの彼は居らず私だけまた眠りこけるわけにもいかないのでグッと伸びをしてスリッパに足を通した。
いくら日の光は暖かくても室内の空気はひんやり寒く、ぶるりと身震いをしてしまう。
早く暖かな部屋に移ろうとパタパタと音を立てて駆けながら寝室を出た。
「おはよう」と声をかけたらソファーに座って新聞を読んでいたジョニィは起きて来た私に気付いて「おはよう」と返してくれる。
隣に腰掛けてジョニィの読んでいる新聞を覗き見たら、片手で顔を上げられてそのままジョニィにキスされる。
何度か啄むように、そして最後にペロリと唇を舐められてジョニィの唇が離れて行く。
「朝から、なあに」
「君が可愛かったから」
「…ジョニィってそうすぐ恥ずかしいこと言えるんだから」
ばか、とデコピンひとつ食らわせたのだが、威力は全くなく情けない音がした。
それでも「痛いな」と言ってくれるジョニィは優しい。
コーヒーでも淹れてこようかとソファーから立ち上がろうとすれば、腕を引っ張られてバランスを崩し、ジョニィの膝の上に倒れこんでしまった。
びっくりしてジョニィを見れば、意地悪そうな笑みを浮かべて「まだここに居て」と可愛くおねだりされる。
「だってジョニィ、新聞読んでるじゃない。その間、暇だもの」
「じゃあ読まない。名前と居る」
「ワガママ末っ子ジョーキッドめ」
「名前が甘やかすからそうなるんだよ」
図星なので言い返すことも出来ずに口を噤む。
元々使用人の子どもとして幼い頃からジョースター家でジョニィのお世話や遊び相手になっていたため、私に非がないわけではない。
勿論、ジョッキーとしては一流中の一流だし、その結果を出すためにはどんな努力でもしていたのはわかる。
ただ、私にだけはこうなのだ。
自立すると言った割に家を出る時も私を連れて行くし、ジョニィが大人になりいつの間にか恋人同士になっても、この関係は変わらなかった。
ジョニィは離れていかない私に気を良くしたのか、まだ寝癖のついた私の髪を梳いたり、私の手をなぞるようにゴツゴツした指を絡めたりしている。
「ジョニィ、楽しいの?」
「楽しくはないかな」
「…ねえそれ」
「でも幸せかな」
「…そう」
起こってやろうという気もなくなる答えに気が抜けた。
「私もつまらないけど、ジョニィの体温で眠くなってきた」と言ってやれば、「じゃあ昼寝でもしよう」とジョニィの提案。
今日が休日だからこそできる、幸せな昼寝をしに二人で寝室に戻った。
(相互記念/笹御様へ)