うちの学校の有名人といえば、イタズラ大好き問題児のジョセフ・ジョースターと泣かせた女の子は数しれずなシーザー・A・ツェペリの2人。
ジョニィのお兄さんとジャイロの従兄弟であり、二人とも先輩である。
知り合いの血縁者という感じで別に接点があるわけではないのだが、何故か今、この二人とカフェテリアで遅い昼食を共にしている。
二人がごはんそっちのけで会話をしていて、私はそれをなんとなく聞きながら下の購買で買ったたらこスパゲッティを食べていた。
適当な相槌でしか参加できないし、私がここにて一緒に昼食をとる必要性が感じられない。
そんなことを考えているうちに食事もおわり、スパゲッティの海苔がついていないか確認しようと手鏡を出したところでシーザーさんに「無防備な君も可愛いよ、シニョリーナ」と微笑まれた。
「しにょ…?」
「レディって意味だぜ」
「ああ、ジョセフさんありがとうございます」
いくらイタリア語を勉強していても、とっさには出てこないものである。
納得したところでプラスチックの器を捨ててこようと立ち上がると、シーザーさんとジョセフさんに腕を掴まれた。
「どこに行くんだよ」
「そうだぜ、まだ講義まで時間があるだろう?」
「いやァ…私お昼ご飯食べに来ただけなので…」
そう言ってみても「でも暇だろ?」とジョセフさんに指摘されたらぐうの音も出ない。
仕方なくその場にまた座ると、ジョセフさんとシーザーさんに「ところでどっちと付き合ってるんだ?」と唐突に聞かれた。
「付き合って…?」
「ジャイロとジョニィ」
「兄さんから聞いたぜ〜?ジョニィの彼女って」
「ジャイロとだろう?」
「いやァ…二人とも友達ですから」
そういえばジョナサンさんの車に乗せてもらったときに、ジョニィの彼女だと言われて訂正することをすっかり忘れていた。
それがそのままジョセフさんに伝わったのだろう。
二人とも私の答えに満足いかなかったらしく、シーザーさんは眉間にシワが、ジョセフさんは信じられないというオーバーリアクションをしてみせる。
そこまでしなくてもいいじゃないか。
「聞きたいことがそれだけなら、サークル棟戻ります」
「あれ、機嫌そこねちゃった?」
「おいJOJO、お前のせいだぞ」
「…」
完全に二人のペースに巻き込まれてしまい抜け出せなくなってきた。
何処かに救世主はいないのかと周りを見渡せば、なぜか大学のカフェテリアにナランチャくんがいた。
「おーい」と手を振ってみれば向こうも気付いたようで、こっちに駆け寄ってきた。
これはチャンスだ。
「何してんだァ?名前」
「なんでも。ナランチャくんこそどうしたの?」
「フーゴが図書館に居るみてーなんだけどよォ、図書館の場所がわからなくて」
「大学が広過ぎるのが悪いんだ」と怒るナランチャくんを宥めて、シーザーさんとジョセフさんに「この子を送ってきます」と有無を言わさずその場から逃げた。
やっと逃げられた。
はあ、と安堵のため息をつけばナランチャくんは「何かあったのか?」と気遣ってくれた。
「大丈夫。ナランチャくんのおかげでね」
「そうなの?」
「そうなの」
「図書館行こうか」と言えば「そうだな!早くしようぜ!」と腕を引かれた。
図書館そっちじゃないってば。