ジョジョ | ナノ
あの忙しない夏も終わり、青々とした木々の葉も赤黄色に染まる季節が顔を見せはじめた。
都会よりも自然環境がよく、かといって物がなく不自由することもない杜王町だが、ここ最近は平和過ぎて漫画のネタに出来るような出来事は起きていない。
平和を取り戻して、そこから平行線を辿るだけ。
取材に出かける回数も、前よりは少なくなった。


だからといって全く外出せずにいるということはない。
僕の作品にリアリティは必要で、学生のくだらない会話や街に溢れかえっているサラリーマンの姿など、どんな些細なことでも僕は描き作品に活かしていく。
今日も何か収穫はないかと駅前でカメラを片手にブラついていれば、田舎町ではあまり見かけることのないブロンドの青年が目に入った。
それに、体格もしっかりしていて顔も驚くほどに整っている。
なかなか見ることのないモデルを見つけに観察しながら、男の周りにも気を配る。
一人なのか、誰か友人や家族と一緒なのか、もし誰かと一緒ならその相手がどんな人物なのか。
それだって大事なことだ。
ただ、先ほど電車が到着したばかりでなかなか男の周りの様子が見えないので、仕方がなくこちらから近づくことにした。
そして男と手を繋ぐ人物をみて、呆気に取られることになる。

「…名前じゃあないか」

そいつは近所のアパートに住む大学生だった。





あの夏から数回、承太郎さんと連絡だけはとっていた。
別に世間話をするような仲ではなかったのだが、ディエゴの戸籍のことや各々の手続きを引き受けてくれた恩もあり、手続きの話と共に少しだけお互いの近状を話すようになった。
私は主に杜王町のこと、学校のこと、ディエゴのこと。
承太郎さんはディエゴのやっかいな手続きのこと、仕事のこと、そして娘のことを。
けれどそれも最近は頻度が落ちていて、そのうち、なくなるんだと思う。
さみしいとは思うが、他人なのだ。
私の能力を使ってまで、わざわざ運命を変えてまで、繋がっていようとは思わない。
今隣に居るディエゴが居るだけで、それを繋いでおくだけで十分だ。

「寒いね」

「薄着で来たのが悪い。着込めばまだ寒いというような季節ではないだろ?」

「わかってるけどさ」

はあ、と冷えた指先に息を吐きかけると、ディエゴはその手をとって自分の指と絡ませていた。





名前の知り合いに紹介され、また馬の世話をすることになった。
このまま働かないままでは人としてダメだと名前が言ったから、そして競技用の馬を育てている元ジョッキーがいるということで、すんなりと決まった。
決まらなければ、他に仕事はなかっただろう。
電車で少し走った場所にある農場に週五回、好きなタイミングで顔を出すだけだ。
元々馬の能力を見分けることには長けていたこともあり、ジョッキーとしての才能も買われ役に立っているはずだ。
地位や名誉はもういらない、名前がいる生活さえあれば、他は多く望まない。

駅まで迎えに来てくれていた名前はもう秋だというのに薄着で、みているこっちが寒くなった。
それで「寒いね」なんていうものだから頭を小突いてやった。

「薄着で来たのが悪い。着込めばまだ寒いというような季節ではないだろ?」

「わかってるけどさ」

指先が冷えたらしい名前はこすり合わせて息を吐きかけている。
見ていられなくなって、絡めるように手をつなぎ、自分の体温ではあまり温められないことを思い出して上着のポケットにそこまま突っ込んだ。

「暖かいだろ?」

「まあまあ、ディエゴは?」

「まあまあ」

これが、日常。
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -