「最近付き合い悪くない?」
「え?そーかなあ…」
カラカラとミックスベリーソーダのストローを回しながら友達は言った。
こうやって放課後に「ドゥ・マゴ」に来たのは久々だ。
まだ露伴先生からお給料をもらっていない私は、相変わらず貧乏なのでアイスコーヒーのみである。
「アルバイト始めたんだよねー」とアイスコーヒーに空気を送り込みブクブクとさせながら答えれば、友達は椅子から転げ落ちそうになった。
「あんたが?いつから?本当に働いてんの?怪しい人にお金もらってやましいことしてるんじゃないでしょうね。え?本当に?本当にアルバイト始めたの?」
「私ってそんな信用ない?」
「だって、面倒くさがりでなまけものの能天気なあんたが」
「酷い…」
確かに入学式も終わってしばらくはダラけていたかもしれないけど、そこまでじゃあないと思う。
ぷう、とわざと頬を膨らませたら、人差し指で潰された。
「…で、なんの仕事?」
「取材アシスタントとー…あと、モデル?」
「…ホントーにやらしいことしてないでしょうね」
「してないよぉ!あ、電話だ!」
「え?ケータイなんて高価なものいつから…」
「バイトで使うの!お仕事だ!じゃーね!お金おいてく!」
電話口で少々不機嫌だった露伴先生を待たせるわけにもいかないので、スクールバックを手に取るとすぐに喫茶店を飛び出した。
しかし駅前商店街から露伴先生の家までは遠かった。
走っても三十分はかかるし、ずっと走っていたおかげで露伴先生の家に着いたときには呼吸困難で玄関先で倒れるしかなかった。
「バスに乗ればよかっただろう。君は筋金入りのバカだな」
「お金が…ないです…」
「貧乏学生め」
そう皮肉を言いつつも露伴先生が冷たいお水を差し出してくれたので、ありがたく頂いた。
「用事ってなんなんですか?」
「ああ、さっき家に来た編集者がケーキを腐る程持って来たから、君にもわけてやろうと」
「それだけぇ?!」
はああ、と大きなため息が出た。
勝手に急いで来たのは私だけど、急ぎの用事でないならそういう風に言ってほしかった。
がっくりへたり込む私のスケッチを始めた露伴先生に怒っても、今なら文句は言われないような気がする。
文句言ったあとが怖いから、絶対にいわないけれども。
「ケーキ好きだろ。はやく上がれよ」
「本当横暴…」
「何か言ったか」
「いいえなんにも!」
悔しいので露伴先生の背中に一度だけ「バカ!」と口パクで言ってやった。