ジョジョ | ナノ

杜王町の連続殺人鬼は、救急車に引かれるという最期を迎えたらしい。
そう承太郎さんに聞いた。

ディエゴは相変わらず家にいるが、私の周りは段々と変わっていった。

まず、承太郎さんとジョセフおじいちゃんはアメリカに帰ってしまった。
もともとジョセフおじいちゃんの隠し子であった仗助くんに会いに来るのと杜王町のスタンド事件を解決するのが目的だったみたいで、その二つを達成した今、こちらに滞在する理由はないのだ。

そして近所の露伴先生の家の修理が終わった。二階部分が痛々しく焼け焦げていたのだが、修理代を二千万も払って直したらしい。

近所でよく見かけていたイタズラ猫を見かけなくなった。

時々見かける、黒髪の綺麗な女子高生に彼氏が出来ていた。

サロン「シンデレラ」が何時の間にか閉店していた。

そして私はテスト地獄から抜け出し、夏休みを迎えた。


今日はディエゴを連れてカフェ「ドゥ・マゴ」に来ていた。
本当は新メニューのフルーツタルトを大学の友達と食べに行くという約束だったのだが、急に彼氏と旅行に行くことになったらしくドタキャンされたのだ。
少しだけなら強がってもイイだろうと、私も「彼氏とドゥ・マゴに行くことにするから気にしないで」と電話越しに笑って見せた。
もちろん本当に彼氏がいるわけではなく、ディエゴのことを指す。
相変わらずクンクンとコーヒーの香りを嗅いでいるディエゴが彼氏と考えると、なんだかおかしくなってきた。

「なんだ?」

「ディエゴが可愛いなあ、と」

「女はよく男を可愛いと言うが、それは好意あってのことか?」

「そうだね、私はディエゴ好きだよ」

ガチャン、と大きな音をたててコーヒーカップは受け皿の上に落ちた。
中身が少なくカップが倒れなかったためこぼれ落ちなかったのが救いだったが、周りの注目を集めてしまっている。
ディエゴはぽかんと口を開けて黙っていたかと思うと、次の瞬間には私の胸ぐらをつかんで触れるだけのキスをしてきた。

「店を出るぞ」

「なんで?」

「家でお前と二人で居たい」

「私はデートしたかったな」

二人で駄々をこねて目が合い、一緒にぷっと吹き出した。



フルーツタルトでお腹を満たしてディエゴと手を繋いで「ドゥ・マゴ」を出たところで、長身のリーゼント頭の高校生と目が合った。

「あ」

「あッ!…怪我大丈夫だったんスね!」

「仗助くん、だよね。治してくれたって承太郎さんに聞いたよ。本当にありがとうございました」

深々とお辞儀をしたら、「大したことないッスよ!頭あげて!」と仗助くんは慌てた。
見かけと違ってやっぱり優しい子のようだ。
仗助くんは先程から、チラチラと私とディエゴの繋がれている手を見て落ち着かない様子なので「彼氏なの」と宣言してみた。

「外国人の彼氏!だからあの時、名前さんのことあんなに心配してたのか…」

「その時はただの同居人だったけどね、ディエゴ」

「関係ないだろ。…人があんなに心配してたのに記憶が吹っ飛んでけろっとしてやがるし…」

「…タフっスね、名前さん」

「あ、馬鹿にした?」

「してない、してない。…あ、じゃあ俺はこれで」

帰りのバスが来たと仗助くんはさっと消えてしまった。
バスが見えなくなるまで手を振って見送ったあと、ディエゴと顔を合わせる。
それを合図にしたように、ディエゴは私の唇に触れるだけの優しいキスを落として私の手を引く。

「帰ろうぜ」

「そうだね、帰ろうか」



私の日常はこの夏にガラリと変わった。代わりにやってきた新しいディエゴとの日常は、多分この先も変わらないと思う。
ディエゴも私も二人ともお互いを、いやおそらく私の方が、お互いを繋いで離さない。




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