あの事件からずっと、どこに行くにもディエゴが一緒についてくるようになった。
ちょっとした買い物くらい一人で行きたいものだけど、ディエゴと、そして承太郎さんまでそれを許さなかった。
彼ら曰く、私は殺人犯の「吉良吉影」に顔を見られていて、尚且つ相手も自分の顔を見られたと思っていてもおかしくはないため、道端でばったり出会ってしまって殺される、なんてことも十分考えられるらしい。
ついでに危機感がなさすぎると怒られた。
なので、ただポストに郵便物を出しに行く今も、ディエゴは私の後ろにくっついて来ている。
ポストなんて家から歩いて50メートルなのに、それでも「何があるかわからない」とついて来る。
「暑いねえ」
「俺には丁度いい」
「ああ、…恐竜体温なんだっけ」
スタンドのせいか、ディエゴの体温は低い。
ペタペタ触っても嫌な顔をしないため、最近ではクーラーをつけるのをケチってディエゴに寄りかかるようになってしまった。
ポストにお父さんとお母さんへの手紙を出して、また来た道を引き返す。
電話もいいが、通話料金を少しでも抑えたいので緊急の時以外は手紙を送ることにした。
二三日もあれば手紙は何処にでも届くと教えたら、ディエゴは不思議そうにポストを覗いてた。
承太郎さんに「不便だろ」と送ってもらった新品の男物の衣類を着こなすディエゴは、やっぱり少し歩いただけで周りの注目を集めるので、更なる目立つ行動は抑えて欲しいものだ。
Tシャツを引っ張ってはやく離れるよう促すと、ディエゴは私のその手を自分の手と絡めてくる。
「今日はシチューがいい」
「暑いから却下」
「あのソーメンってヤツは却下だぜ」
「じゃあ冷麦にするね」
「一緒だろ」
げえっ、とディエゴが嫌な顔をするので、思わず笑ってしまった。