目が覚めた時には知らない部屋に居て、 真っ白でパリパリのシーツが敷かれたベッドに寝ていた。
そして椅子に座ってはいるもののそのベッドに倒れ込むようにして、ディエゴが自分の腕を枕に眠っている。
クーラーの微風に揺れるフワフワの金髪が可愛くて、髪を遊ばせるように撫でていると、長くて重そうな睫毛が震えた。
「名前…」
「名前、名前」と縋るように呼ばれ抱きしめられ、その重さに耐えられず再びベッドに倒れることになってしまった。
重い重いと訴えても全く退いてくれる気配はなく、うんともすんとも返事をしない。
結局ディエゴが少し退いてくれたのは、承太郎さんが部屋に来た二十分後だった。
「私が事件に巻き込まれたんですか」
「それでソイツがここまで運んで来た」
「ディエゴが」
「ああ」
コンビニを出てすぐ人にぶつかったのは覚えているのだが、そこから先の記憶がない。
ディエゴと承太郎さんの話を聞くに、スーツの男に襲われ、それは承太郎さん達が追っている事件の犯人「吉良吉影」である可能性が高いとのこと。
傷や火傷を負った私をディエゴが抱えて逃げ、財布の中に入れていた名刺を頼りに承太郎さんの所まで運んでくれたらしい。
犯人の顔を見ていないか、身体的特徴はなど色々聞かれたが、本当にその時の記憶が抜け落ちていて何も思い出せない。
唯一の手掛かりは、ディエゴの「女物の香水の匂いがした」というものだけ。
「ん?傷や火傷?」
そういや怪我をしたと言われても何処にも痛みはないし、未だに抱きついているディエゴが邪魔だけど傷跡だって見当たらない。
承太郎さんは「女に傷を残す訳にはいかないだろ」とため息を漏らした。
「仗助に治してもらった。俺の叔父だ」
「へえ!治療が出来ちゃうスタンドかあ…あ、叔父なのに呼び捨てなんですね」
「年下だからな」
承太郎さんがクイッと帽子の鍔を下げたので、色々訳ありなことが伺える。
歳が近い叔父ならわかるけど、年下の叔父って不思議な家系なんだろう。
「お礼が言いたいんですけど、どんな方なんですかね」
「お前も見たことならあるかもしれないぜ。ぶどうが丘のリーゼント頭の野郎だ」
「…ああ」
時々「ドゥ・マゴ」見かけるお洒落リーゼントくんを思い出す。
承太郎さんの叔父は私よりも年下だったようだ。