ジョジョ | ナノ
ここまで名前に近付けた世界は初めてだった。

他の世界のオレはどうやら運命に抗えず大統領によって殺されたか、あるいはジョニィ・ジョースターによって殺されていた。
しかしオレはまだ自分の世界で生きていて、それに目を付けた基本世界と呼ばれるところにいる大統領に協力し、世界を転々としていたのだ。
ただ、他のいくつかの世界で同じように生き残っていた『オレ』は居たらしく、大統領にしてみれば、幾らでも替えが効く駒のような存在だったのだろう。
だからオレも大統領のスタンド能力を利用し、色々な世界の名前を助けようと画策した。
しかし結果はいつだって変わらなかった。

オレの世界の名前は、レース終盤の大きな落馬事故に巻き込まれて死亡した。
らしくもない一目惚れをした相手の亡骸に触れたのが、その世界で初めて名前に触れた瞬間だった。

他の世界でオレがその落馬事故を防いだとしても、暴行、事故、強姦、スタンド使い同士の争い等、様々な要因で名前は死んでしまう。

そして最後、大統領が力尽きるところでまた新たな世界に送られた時には、次元も時代も飛び越えて、しかし名前と出会うことが出来たのだ。
このチャンスを逃してはならない。
逃したら最後、名前が死んでオレは他の世界に渡れない。



「ディエゴ、アイスいる?」

「それより肉が食いたい」

「ディエゴ好きなの牛肉じゃん。そんな贅沢できません。あとここはコンビニなんだから、売ってるわけないでしょ」

軽くオレの背中を叩いて、移動を急かすように手を引く。
そんな幸せをオレがどれだけ望んでいたかは、名前は知らない。

「会計はオレがするから、先に出てていいぞ」

「日本語読めないくせに」

「数字くらいなら読めるさ。お前、クーラーにあたり過ぎて鳥肌立ってるぞ」

「…ありがと」

「じゃあお願いします」とオレに財布を預けてから名前は店内から出て行った。
いかにもアジア系を代表するような顔立ちの店員に一番大きな額の紙幣を出してお釣りを受け取り、外に出た時には遅かった。

「名前、名前…ッ!」

「邪魔が入ってしまったようだな、仕方ない、君にも消えてもらおう」

このスーツ姿の男がやったらしい。
その後ろに見えるのは人型のスタンドであり、名前はどういう能力でかは分からないがこのスタンドによって怪我を負わされたのだ。
まだ息はあり、ショックによる気絶だと冷静に働かない頭で判断したオレは、『スケアリー・モンスターズ』で近くにあるもの全てを恐竜化させ、傷付いた名前を抱えてある場所へと向かった。

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テーマ「人外ファンタジー」
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