露伴先生と承太郎さんのどちらに相談しようか迷って、承太郎さんに相談することにした。
承太郎さんのほうがスタンドについて詳しそうだし、一番年上だし、何より露伴先生がめんどくさくなったら面倒くさいからだ。
そして承太郎さんに「スタンドのことでちょっとしたトラブルがおきたので、ドゥ・マゴで話せませんか?」と約束して一時間後、私とディエゴは約束の十五分前にドゥ・マゴに到着した。
ディエゴには帽子とブーツについていた歯車みたいなもの、あとは手袋だけ脱いでもらった。
まだ少し違和感があるが、これなら街中を歩いても大丈夫だろうと私が判断した。
ただ、服装以外で彼は目立った。
外国人というところだけで目立つのに、顔も整ってるし綺麗な金髪だし体格はいいし長身だし、「目立つ」という言葉の擬人化かと思うほど彼は目立った。
加えて私の腕にピッタリ身を寄せるから、私まで目立った。
そんな私の気遣いなど知らず、ディエゴは今も私の隣の席に座りピッタリくっついている。
コーヒーの香りをクンクン嗅いでいる姿はちょっと可愛いなと思う。
「ねえ、あのね、ボックス席だし承太郎さんも来るし、隣に座るのはいいんだけど、近い」
「いいじゃあないか。オレは昔からお前の体温が好きなんだ」
「昔から?」
「ああ、昔から。…おっと、あれじゃあないのか、お前が呼んだヤツってのは」
ディエゴが指差した先には、怖い顔をした承太郎さんが居た。
「ディオ」と承太郎さんはディエゴのことを呼んだ。
ディエゴも「オレを知っているのか」とニヤリ笑った。
そして承太郎さんがスタープラチナを出してディエゴに殴りかかろうとするものだから、私は慌てて止めに入った。
「承太郎さん!どうしたんですか…!」
「名前…お前何故DIOと一緒なんだ」
「ディオ?ディエゴですよ、彼。彼のことでお話があって来たんです。ディエゴはとりあえず悪い人ではないし、まずはお話しませんか?」
「ね、ディエゴ」と同意を求めると、承太郎さんを抑えてた私を引っぺがしてから承太郎さんを睨みつけていた。
そういう挑発行動は今はやめて欲しいのだが、承太郎さんは私の言葉をとりあえずは信じてくれたらしく、店員さんにコーヒーを一つ注文していた。
お客さんも少ない時間帯だったため、コーヒーはすぐに出てくる。
「…あの、承太郎さん」
「聞きたいことは山ほどあるが、…まずお前の話を聞こう」
相変わらず、承太郎さんはディエゴを睨んでいた。
ディエゴはそこまで気にしていないところからすると、承太郎さんがなにかディエゴについて知っているということだろうか。
まあここで一人悩んでも仕方がないので、時々ディエゴに補足してもらいつつ現状を承太郎さんに話した。
「…するとお前は、ディエゴ・ブランドーという名前で、別次元の人間ということだな」
「そうなるな」
「一つ聞くが、お前のスタンド能力は」
「初対面のお前に教えると思うか?」
「ディエゴ」
ぎゅっとディエゴの手を握れば、渋々という感じで「オレの口元を見ていろ」と言った。
そしてピキピキと唇の両端にヒビが入り、肉食動物のような歯がむき出しになった。
瞳も人間のものではなくなっている。
「怪獣みたい…」
そう私が言うと、ディエゴは満足そうに頷いた。
承太郎さんは答えになるものを教えてはくれなかったのだが、興味深いことを教えてくれた。
『そこのディエゴ・ブランドーという男に非常によく似た、ディオ・ブランドーという男が百年前に存在していた。嘘みてーな話に聞こえるかもしれねぇが、吸血鬼の能力とスタンド能力を持っていて、そいつに瓜二つの顔をしていた。ただ、そのDIOは十年前に確実に死んでいる。関係性を探るのは難しいだろう』
そう言って、承太郎さんはドゥ・マゴを出て行った。
なんの解決にもならなかったが、「解決しない」という答えが出せたので私は満足だ。
「じゃあこれからどうしようか」
「これから?」
「ディエゴの住む家とか」
「お前の家に決まっているだろう」