オープンテラスでカフェオレを飲みながら、チラリと仗助くんを見る。
やっぱり昔の可愛い仗助くんの面影なんか残ってなくて、ガタイの良いリーゼント頭の不良でしかない。
キュートなたれ目くらいだ、可愛いのは。
顔がいくらカッコ良くても、ビビりでチキンで臆病で弱気な私にはもうその格好だけで怖いし、あれから仗助くんもなかなか話してくれないから、沈黙も怖い。
つまり怖い。
なんとか帰れないかと模索していたら、「なあ」と仗助くんに声をかけられて飛び上がった。
「名前ちゃんって、俺の一つ歳上だったよな?」
「うううんそうだよ」
「どっちだよ」
仗助くんは呆れたように笑う。
そういえばスッカリ忘れてたけど、私は仗助くんより一つ年下だったんだ。
仗助くんがハーフで今では私より身長が高いからそうは見えないけど、半年だけ私がはやく生まれたために私の方が学年が一つ上なのだ。
「仗助くんが後輩…」
「名前先輩ッて呼んだ方がいい…?」
「ううんいいの是非呼び捨ててください…」
私のことなんて、と続けようとしたが、仗助くんが顔を真っ赤にしているから私も開けた口が塞がらなくなった。
リーゼントと身長のせいで怖いと思っていたけれど、そういう顔は可愛いし、かっこいい。
これがギャップというやつか。
仗助くんは暫く考え込んだ後、テーブルの上で遊んでいた私の手を握って、紫色の綺麗な瞳で私をまっすぐ見た。
「そうだよな…名前ちゃんと結婚するって約束したし…そうなると呼び捨てが普通なのかもしれねーし…」
「結婚!?」
「小さい頃…ホラ」
「したけど…したけどホラそれって小さい頃の口約束だしね、仗助くんもかっこいいし彼女とか好きな子とかいるでしょ…?」
「彼女はいねェし、ずっと名前ちゃ、…名前のこと好きだったから」
「〜ッ!!」
仗助くんがとんでもないことを言うので、私は椅子から転げ落ちた。
仗助くんが助けてくれたけど、「水色のレース可愛いッスね」なんて耳打ちするものだから、また転げ落ちてしまった。
そして膝を擦りむくというオマケももらった。
「お嫁にいけない…」
「俺じゃあイヤ、か?」
「イヤじゃあな…もう、もう!」
仗助くんのばか!と言うしかなかった。
でも、もう仗助くんは怖い不良じゃなくて、でも気が抜けない幼馴染にもどっていた。