ジョジョ | ナノ
岸辺露伴とは目の前にいる彼の名前であり、有名漫画家である。
岸辺露伴という名前は知らなくても、彼の代表作である「ピンクダークの少年」は私でも名前くらいは知っている作品だった。

「ようやく理解したんだな。やれやれ、近頃の高校生はそんなに被害妄想が激しいのか?」

「ほんとうにすみません」

いやいくら彼が有名漫画家だからと言っても、私だけがこうやって責め立てられ謝らなければならないのは理不尽だと思う。
変態呼ばわりしたのは確かに私が悪いが、勝手に写真を撮ったり誤解されるような服を着たりしているところは彼が悪い。
でもそんな事言ったら先生をまた怒らせるだけなのでただひたすら謝るしかなかった。
何故か。
早く帰りたいからだ。

私は今、岸辺露伴先生の家に居る。
「ドゥ・マゴ」を引き摺られるようにして出たあと直ぐに左ハンドルの外車に乗せられ、強制的にこの豪邸にお邪魔している。
アンティークのような家具や小物が沢山ある客間にいくつか漫画のイラストが飾られている。
それが不思議な事にこの部屋にマッチしていて、私は何故か不気味だと感じた。

「なんだ。僕の漫画に興味があるのか?」

「いやあ、…お掃除大変そうだなあって」

「君がするわけじゃあないんだから余計な心配はしなくていい」

「や、やだなあ、心配なんてしてないですよぉ」

キョロキョロと部屋を見回すのも、どうでもいい事を話してしまうのも、ちゃんと理由はある。
前述の通り、早く帰りたいからだ。
でもなかなかこの岸辺露伴先生は私を解放してくれない。
解放してくれないどころか、ガン飛ばしてる。こわい。

「…なあ。君、そういえばアルバイト先を探していたよな」

「さ、…がしてないです」

「僕の前で嘘を付くなよ。君のちっぽけな嘘なら簡単に見抜けるし、なによりあんな大声で言っていたじゃあないか。楽なアルバイトがしたいと」

「うう…」

何となく話が読めてきた。
私みたいな計画性のないバカでもわかるよう、かなり嫌味ったらしい言い方と高圧的な態度で私の逃げ場を無くし、何らかのアルバイトをさせようとしているのだ。
私が諦めの目をして岸辺露伴先生を見ると「物分りが良い奴は好きだぜ」と鼻を鳴らした。

「別に難しいことなんかさせないさ家事もいまのところはしなくて良い。危なっかしいし」

「えっ酷い」

「その今使っている食器の価値すら分からないようなのに、洗わせて割られたらたまったもんじゃない」

「すみません…」

「分かればいいんだ。それで、本題だ」

そう言って私に向かって投げたのは使い捨てのインスタントカメラ、が二台。

「学校の資料が欲しいんだ。だが僕は生徒ではないから、気軽に校内には入れない。だから君に指定する場所の写真を撮ってきて欲しい」

「は、あ…」

岸辺露伴先生から言われたアルバイトが、想像していたよりもまともそうなことで拍子抜けだ。
それくらいなら遅くても二三日で終わるだろうし、写真を撮るだけなら楽だ。
喜んで引き受けよう、と思った矢先、「ああそうだ」と先生。

「アルバイトはそれだけじゃあないからな。君にはモデルになってもらう。だから僕がいいと言うまでは毎日此処に来るように」

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テーマ「人外ファンタジー」
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