ジョジョ | ナノ

空条承太郎には、姉のような幼馴染が居る。
名前を名前と言う。
承太郎より三つ歳上で、実家から電車で一本の大学に通っている。
必要以上の努力を嫌い、大抵のことは「なんとかなる」と言って自分から行動を起こすことのない楽天家で、けれども承太郎とはいくつになっても姉弟のように付き合う幼馴染だ。

その幼馴染は、焦っているのだと言う。
楽天的な考えで、大学に入学したら自然に彼氏の一人、サイフの二人や三人、少なくともヒモくらいは出来るだろうと考えていたらしい。
しかし、サークルにも入らずただ家と大学を往復し、時々承太郎とのんびりお茶をする生活を繰り返していては、異性と知り合う機会なんてあるわけがない。
それに気付いたのはつい最近であり、恋人と手を繋いでキスの一つや二つや三つ、毎日ドロドロに布団の中で情交に及ぶことを私もしてみたいと承太郎の前で愚痴るのだ。

「ごめんね、エッチな話して」

承太郎のことを弟のようであり穢してはならないものと思っている名前はそう謝り、テーブルの上に上半身を預け項垂れる。

「セックスしてーのなら、俺とすりゃあいいだろ」

そう承太郎が言えば、名前は項垂れた姿のままフフッと小さく笑って、「承太郎に申し訳無さすぎる」と返事が来る。

「私さ、多分、いや絶対ね、彼氏出来ないのは自分のせいだと思うんだよ」

「そうだろうな」

「ははは、承太郎くん、納得が早すぎるよ」

お姉さん怒るぞ、と気の抜けたイタズラ顔を見せて威嚇してくるが、そんな姿はどうも歳上に見えない。
いつの間にか随分と自分より小さくなってしまった名前は、承太郎の目にはもう姉のような存在ではなく、意識すべき異性として映っているのだ。
そんな名前が恋人が欲しいと言っているのだから、これはチャンスのように思えた。
しかし相手はなかなか手強かった。

「承太郎みたいなお金持ちでイケメンな彼氏現れないかね」

「だから、俺でいいじゃねーか」

「承太郎。君は確かにいい物件だ。けどね、お姉さんがいないと寂しいってシスコンは良くないよ。というか、承太郎みたいないい男がいるから、私の目は肥えてしまったんだね。承太郎が悪いね」

「分からねー女だな」

承太郎はため息をついて立ち上がり、名前のすぐ横に腰を下ろす。
なんだなんだと視線を向ける名前に顔を近付け、「テメーは鈍感か」と詰め寄れば、「思春期?」とまたも呆れる返事が返ってきた。

「無理やり抱かねーと分からねえのか、その頭は」

「ヤメテッ、初めてなの!」

「それを知らねーと思ってるのか」

「あ、改めてそう言われると恥ずかしい…」

「そうやってはぐらかしてるから彼氏出来ねーの、ちゃんと理解したほうがいいぜ」

だらしなくテーブルの上に投げ出された手を引いて自分の腕の中に名前を閉じ込めれば、「ギャッ」と変な声を出して固まった。
あの口の上手さも、承太郎のこの行動の前では役に立たず、ただ固まる以外にすることがない。
「こういうことしたかったんだろ?」と承太郎が鼻で笑いながら名前に言葉をかければ、ゴニョゴニョと訳の分からない言い訳を始める。
それが面白いので、「次はキスで、それからセックスか」と続ければ、「承太郎のエッチ」と胸板を押して抵抗の意思が見られた。
もはや力で叶わないのは、名前も承太郎も分かりきっている。



アクト ユア エイジ
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