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マフラーの欠かせない季節が、またやってきた。
ぐるぐると自分の首に巻きつけると、そろそろ切らなきゃと思っている髪の毛を巻き込んだのか、静電気でほんのり膨らむ。
それを手櫛で整えて、息を吸って、吐いて、鏡の前を離れる。
「お疲れさまです」とお決まりの挨拶を交わして会社の入っているビルを出れば、風に乗って雪が曇り空を舞っていた。
道理で寒い訳だ、とうっすら開いた口からは息が白くなって零れ、消えていく。
時々吹く向かい風に肩を窄めながら、両手をトレンチコートにしまって早足で待ち合わせ場所へと向かった。





随分と待たせてしまったようで、駅前で落ちあったジャイロの鼻の頭がほんのり赤く染まっていた。
私よりぐるぐる巻きにしたマフラーとコートの隙間から飛び出た髪の毛が、なんだか可愛く見えてつい笑ってしまう。
待ち合わせに少し送れた私を咎めるように、ジャイロは両手をダッフルコートのポケットに入れたまま身体を傾けて体当たりをかましてきた。

「ごめんごめん。でも、どこかカフェに入っててくれても良かったのに」

「…いーだろ、別に」

「早く行こうぜ」とポケットに手を入れたまま少しだけ肩を浮かせて脇を開き、私の手を誘う。
それに甘えて、私はそこに自分の腕を通してピッタリと密着する。
お互いにそこそこ厚手の上着を着ているために、くっついても暖かさは感じたりしないが、それでも、心は暖かくなる。

「今日は何を食べに行くんだっけ」

「イタリアンに決まってるだろ?本場の店を見つけたから、お前に食わせてやろうと思って」

「ええー、高そうだなあ」

「心配するほどじゃあねーから、安心しろって」

イタリアンと聞いて、値段を気にしつつも頭の中はトロトロのチーズが乗ったピザでいっぱいになる。
ジャイロのオススメならば、間違いなく美味しいお店だろう。


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