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日差しが強くなりはじめる午後2時
3人は砂浜中央に建つ海の家に入って、初めて3人で焼きそばを食べた
「Jはフォークね」
「いただきまぁす!」
「いただきます」
Jとジョーは同時に焼きそばをすすって、同じように口周りに青のりをつけた
「…ぷっ…2人とも鏡みてぇ」
向かいに座っていたジェットはそんな2人を見てクスクス笑った
***
食後、日差しの照りつけで適度に温まった砂浜でジョーとJは海に入る準備を始めた
「ジェット、本当に海に入らなくていいの?」
ジョーが準備をしながらジェットに尋ねた
「うん、ここで見てる。『ママが海パン一枚』ってなんか変だろ?」
「…人目なんて…―」
ジョーは構わないと言おうとして、ジェットを見る周りの人間の視線に気づいた。海風がジェットの髪を揺らすと、女性と勘違いした野郎共がヒソヒソと話しているのが目についた
(……………)
「…そうだね。じゃあお留守番頼むね」
嫉妬心を隠すようにジョーは微笑んで同意した
「…J上脱いで。海パンは、はいてきたよな」
「うん!わーい!」
JはTシャツを脱ぐと水色の海パン一枚になって海に走った
「Jーまだ入っちゃ駄目だよー」
Tシャツと海パン姿のジョーが呼び止めるとJはクルッと振り返り、その場で駆け足した
「パパー早く早くー」
「ふふっ相当入りたそうだな」
七分パンツに半袖パーカー姿のジェットが浮き輪を持って笑う。反対にジョーは真剣な顔をしていた
「でもJの体は浮かばないから、ちゃんと見てないと…」
ジェットは「あっ」と小さく声を漏らし、Jを見た。波間でうずうずしている姿は小さな子供そのものでも体は金属で出来ていると再確認した
「…ジョー…Jを頼むな」
ジェットはジョーの手をぎゅっと握り見つめた
「…うん…大丈夫、沖に出ないようにするから」
ジョーはジェットから浮き輪を受け取りJの元へ歩いて行った
「パパそれなぁに?」
「浮き輪だよ。さぁ、バングル付けて、離しちゃダメだよ」
ジョーはバングルをJの右手首につけた。バングルは紐で浮き輪に繋がれていて浮き輪から離れるのを防いだり、置き忘れをしないためのものだった
『なぁジョー』
「!」
ジョーの頭の中にジェットの声がした。脳内通信機からだった。波打ち際より遠い砂浜に座るジェットに振り向く
『何?ジェット』
『その浮き輪さ、めちゃくちゃ軽かったんだけど、中は空気じゃないのか?』
ジョーはニコッと笑った
『ギルモア博士の特注だよ。ビニールに特殊な加工をして耐久性を高めたモノなんだ。中には圧縮ヘリウムが入ってる。Jが使ってもちゃんと浮くようにね』
ジェットはへぇーと関心した様子で相づちを打った
「パパ?」
Jが不思議そうにジョーの横顔を見上げて、それに気づいたジョーはニコッと笑いかけた
「ごめんごめん。じゃ海に入ろうか!」
「うん!わぁい!」
Jは浮き輪を持って海に走って行った
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