┗5
気がついた時、俺は寝室のベッドに一人で横になっていた
サイドテーブルの卓上ランプだけが灯り部屋は薄暗かった
「………」
少し気だるく喉が乾いていて、毛布を退けると服を着ていなかった
置時計を見ると夜中を過ぎていて辺りは静かだった
「…俺」
記憶をたどり何があったかを思い出そうとした時、ドアが静かに開いた
盆にコップと水差しを持って寝室に入ろうとしているソイツと目が合った
「……」
「…ぁ」
記憶が一気に頭をめぐり、顔が熱くなった。
ソイツは真顔で接近して俺に顔を向けたままサイドテーブルに盆を置くと俺の顔に触り直後抱きついた
「わっ!…え、ちょ」
「よかった…起きないかと思った」
横を向くとソイツの顔が見えた。泣きそうな、心底安心したような表情で長く息を吐いて脱力した様子で俺にもたれた
「…心配かけたな」
俺は抱きつくソイツの背中をさすって髪をくしゃっと撫でた。ソイツは首を横に振り俺は更に強く抱き寄せられた
「無理させたのがいけなかった…ごめん」
「……」
感情を出すコイツが愛しい。後悔に歪む顔も、そして
「ヤワじゃないって言っといて情けないのは俺の方だ…ごめんな、次は全部受け止めるから…」
驚きの裏に喜びをにじませた顔も
「また、シていいのか」
「そりゃあ、まぁ…つか、一回で終わりにするつもりだったのか?」
ソイツは照れながら伏し目がちに視線をそらした
「…一生の思い出くらいには思っていた」
大胆なくせして変なところ遠慮がちで
「マジかよ!ハハハッ」
まだ知らない顔があると思うとそれを知ることができると思うと楽しみで仕方ない。
きっと、コイツも同じ気持ちなのだと
「…カル」
「ん?」
「……」
寡黙な俺の大事な親友。
長年その無言から気持ちを汲み取ってきた
隠していた気持ちも知った。
だから今コイツがどうしたいか分かる。
けど、
「たまにはちゃんと言ってくれよ」
「……!」
俺だって欲がないわけじゃないから
「…カル、キスしていいか」
たまには欲しがってもいいよな。親友
end
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