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青い髪の彼に『親友』と呼ばれることを
素直に受け止められなくなったのは

いつからだろう

………。

初めて話したのは、そう
小さい頃あいつが親無しといじめられていて

それをかばって…

感謝されるかと思ったら

あいつは

余計なお世話だって、言ったんだ



***


「おーや無しぃっ!青髪カルはおーや無しぃーっ!キャハハハッ」


『親はいる!召喚老グラデンスだ!』


俺をからかう連中にそう言えたらよかったけれど

それは固く禁じられていた

アクラス召喚院に属する権力者、召喚老の一人で俺の育ての親であるグラデンス爺さんに迷惑がかかるだけじゃなく、俺が召喚老の秘蔵っ子と知れたら俺自身に危険があるからと後から知った

でも当時はただ爺さんの迷惑にならないようにとだけ考えていた

「カルー言い返してみろよー」

「親無しは口も無いんだなー」

「……っ!」

体が一回り大きいからって、親がいるからって、なぜ俺はこいつらに突き飛ばされなければならないのか

俺は尻餅をついて手を軽く擦りむきながら、それでも何も言い返さずただ相手が飽きるのを待っていた

波風を立てないように、俺だけが我慢していればいいと…思っていたのに

「やめろ!」

ビクッとなるほど大きな声で叫んだソイツは、滅多に喋らない奴だった

町中で見かけはしても接したことはなく話したことも一度も無かった

だから

「うわー!いてっ何すんだ!」

「こいつ!うわあっ!」

なぜソイツが俺を突き飛ばしたやつらと喧嘩をしているのか

「くっそー逃げるぞ!」

「うちの親に言いつけてやる!ばーか!」

なぜ俺に背を向け、かばうように立っているのか

まるで理解できなかった

「……」

ソイツは揉み合いで汚れた服を軽く叩いてこっちに振り向いた

その瞬間は忘れられない

蔑みや嘲笑ではない
ただ静かに、こちらを見て微笑を浮かべて

無言で気遣うように首を傾いで手を差し伸べられて…

すごく、嬉しかったのに

「……よ」

俺は初めての経験にどうしていいか分からず、波風を立ててしまったことが爺さんに迷惑がかかってしまうのではないかという焦りが先行して

「余計なお世話だ!」

礼も言えずにその場から逃げてしまった

「……」

結局、俺を突き飛ばしたやつらは親に言いつけたことでむしろ親に叱られたらしく俺の家に謝罪に来た

俺はそいつらを許して、いじめも無くなり同年代の友達が出来た

アイツは俺をかばった一件をひけらかすこともなく、まるで何もしていないかのように寡黙なままだったが

「なぁ、一緒に、遊ばない…?」

俺が話しかけると笑顔で頷いてくれた

俺が唯一気を置かず接する相手

いつしか俺たちは親友になった


***


時が過ぎ、俺とアイツは変わらず親友のまま、なにをするにもほとんど一緒だった

大抵は俺から寡黙なアイツを遊びに誘う形で、我ながらかなり世話焼きになっていた

今思うと構われたかったのかもしれない

アイツが必要だったのは俺の方だと…



「なぁ、俺、召喚士になろうと思うんだけど、お前も目指さないか?」

俺はグラデンス爺さんに促され、召喚士になるための寄宿学校に進学することになった。

その時も実力を見込んでいたとはいえ、できるだけ親友と一緒にいたい気持ちからつい誘ってしまった。

召喚士はエルガイアに住む人間を滅ぼそうと暗躍する四堕神に対抗する力、召喚術を使う戦士たちのことで、人間を助けたとされる封神ルシアスにより授かるものだった

ルシアスの加護によって異世界を繋ぐゲートは開かれ人々はグランガイアへ行くことができ、そこで召喚術を会得する

歴史上の戦士や亡き神々をも呼び出し使役する力を操る者、それが召喚士だった。

「……」

アイツは滅多にNOと言わず、進学先も決めていなかったからかあまり迷いは見せず寄宿学校への申請書を受け取ると書き始めた

なんでもすんなり受け入れてくれる親友に
俺はたまに不安を感じた

「なぁ…無理強いさせちまったか?」

不安にかられ聞く度、アイツは決まって

「……」

何も言わず笑って首を振った

「…ハハッ、じゃあ決まりだな!」


俺たちは寄宿学校で召喚士になるための勉学に励んだ


しかし、思いの外俺たちの会う時間は減っていった

アイツがマイペースなのか、それとも俺がハイペースなのか

俺はあっという間に実地訓練を経てグランガイアへのゲートを抜け召喚術を授かり会得し、グランドクエストをこなし実力で名を挙げていった

いつの間にか俺は第十四魔神討伐隊レブルエンスのリーダーになっていて、学生寮を出ていた俺は寄宿学校でくすぶっているアイツと会う時間が激減した

「なあ、もっと積極的にいこうぜ。お前の実力なら、すぐにでもグランガイアに行けるって」

俺はマイペースな親友に少なからず苛立ちを覚えた。実力は俺と対等、いやそれ以上なのを知っていたから

それに任務をこなすため、四堕神討伐のためなら召喚士はいくらいてもいい

なにより、早く一緒に戦いたくて、暇があれば実地訓練に誘った

アイツは迷惑がる様子もなく俺の誘いには大抵乗った

そして大方の訓練が終了しゲートをくぐる日が来て

「よう!無事に帰ってこれたみたいだな」

俺は親友が召喚術を得て帰ってきたことを喜んだ



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