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「怪我はないか、ティズ」
「はい、大丈夫です…」
帰還する武装ヘリの中でスカールはティズに目をやり肩を引き寄せ顔を撫でた。
ティズは照れながら下を向いて、撫でられるまま頭を傾ける。長い髪を滑るようにスカールの手は繰り返しティズの頭を撫でた。
「スカール様」
ティズは少し困った顔でスカールを見上げた。
「どうした、ティズ」
「ぼくは…攻撃を受けたことを無線で報告しました。基地は危険な場所だったのになぜスカール様が直接に来たのですか。スカール様も本拠点で聞いていたかと」
「……」
スカールは黙りティズを見つめ。
「お前が心配だったからに決まっているだろう。他に何があるのだ」
当たり前のように答えた。
「……」
ティズは困惑を隠せずそれ以上聞くことが出来なかった。
「休みなさい。明日の任務も代行させる。側にいなさい。」
「…はい。」
スカールはティズに膝枕をして背を優しく撫でた。
「……」
ティズが目を閉じると
「…あの者たち…裏切り者のサイボーグたちとは話をしたのか」
スカールは呟くように聞いた
「…いえ。なにも」
ティズは目を閉じたまま、初めてスカールに嘘をつき隠し事をした。
スカールもそれ以上言及しなかった。
「………」
ヘリが本拠点に着く頃ティズはスカールの膝枕で寝ていた。
「…J」
スカールは目を閉じ横になるティズの頭を撫でながら呟いた。
「……」
時々投げ掛けられる知らない名前。
ティズは聞こえないフリをした。
***
「ずっるーいですのー!」
本拠点にはティザーのフォローを終えたティゼが戻っていた
スカールが戻ったことを知り意気揚々とヘリポートまで出迎えたが横にティズがいることに驚き明らかに怪訝な顔をし事情をティズから聞き思わず叫んだ。
「ティズばかりなんでスカール様と一緒ですの!?ティゼの時は立体ヴィジョンでしたのに!」
ティゼは嫉妬を隠さずティズに詰め寄った。
ティズはオロオロとうろたえつつ両手でまぁまぁ、となだめる。ティゼは聞く耳を持たずプンスカした
「ティゼ頑張りましたのよ!サイボーグマンを指示通りに減らして来たんですから!」
「ティゼ、落ち着いて…ぼくに言われても困るよ」
ティズがたじたじになっているとスカールはティゼの頭をぽんぽんと撫でた
「そのくらいにしなさい。ティズを迎えに行ったのは付近を飛行していたからだ。」
ティゼはコロッと表情を変え頭を撫でるスカールの手に懐いたようにすりより
「でも迎えに来てほしかったです。ティゼ大変でしたのよぉ」
猫なで声で甘えた。
「すまなかったな。さぁメンテナンス室に行くぞ。ティゼにはまた任務を頼みたい。頼りにしているぞ」
「頼り?…はーいっティゼ、スカール様のために頑張りますの!」
スカールの言葉にティゼは目をキラキラさせ両手をバッとあげると裾を振りながら喜んで返事をした
「……」
ティズはティゼをなだめるために吐いたスカールの嘘を黙って聞いていた。自分の任務代行にするために慕うティゼの気持ちを利用しているのも理解していた。
「ティズ、来なさい。」
「……はい、スカール様」
スカールの自分たちに対する接し方の違いにティズは少なからず違和感を抱いた
そして裏切り者のサイボーグである二人のことを思った
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