┗3


ティズと009に瓦礫が降り注ぐ。

二人は同時に屈むと加速装置で移動、002は両足のジェットエンジンを展開し瓦礫から退いた。

加速装置ですべてがゆっくりの世界で瓦礫から逃れながら009はティズに叫ぶ。

「ティズ。君に、君たちに何があったんだ!」

「……」

ティズは答えなかった。

轟音と共に瓦礫が落ちコンクリートや鉄骨が崩れ床に落下した衝撃で粉砕され煙が舞った。基地内に響いていたサイレンは消え、頭上には晴天が覗き陽光が基地内を照らした

002は壁際に009とティズは瓦礫から数メートル離れた距離にいた。

瓦礫の崩れる音が減った頃、陽光に照らされた真っ黒な武装ヘリがプロペラ音をさせながら基地に影を落とした。

『ティーーーズ!!!』

ヘリの拡声器から声が響く。

009は驚いて上を向いた。ティズも目を丸くして驚いた。

「この声は…!」

「スカール様…!?」

ティズがヘリに注視する中、002は何も言わずヘリを睨み付けた。

その凄まじい殺気に気づいた009が002の方を見た。

「スカール!!テメェエエ!!!」

009が002を視認するより先に002はジェットエンジンで飛び立ち穴の空いた天井から基地の外へ飛び出すとヘリの側面が見える位置に空中停止し怒りに満ちた表情でSPガンを構えた。

ティズは驚き焦った表情で002の飛び立った軌跡を見て次にヘリを見た。

「スカール様ー!」

ティズは加速装置を使い移動し壁を蹴りあげ天井近くまで迫る

「ティズ!その先は君の跳躍では…」

009が言いかけたがティズは天井の穴にめがけ壁を蹴り跳んだ。

壁を蹴るタイミングと同時にかかとの小さな穴からジェットが噴射した。

ブーツの裏がバーストで一瞬光り跳躍の距離を延ばし天井を抜け基地の外へ消えた。

「ジェット…エンジン…そんな…なんてことを…」

009は驚き辛そうに顔を歪めると見えなくなるまでティズを目で追った。

ヘリと対峙した002は全体を見ると拡声器のマイクを握りこちらに気づいたスカールと目が合った。

『…00ツ―ゼロゼロナンバーサイボーグなぜここにいるのだ』

スカールは002に気づくと一瞬吃(ども)り話しかけた。

が、002には聞こえなかった。

「あああああ!!!」

我を忘れ怒りで手に力が入りトリガーを引いた

「やめてぇ!」

が、銃を撃つより一瞬早くティズが002へ飛び付いた

「ッ―!!!」

ティズは002にぶら下がるようにしがみついていた。

ジェットエンジンの補助によりここまで跳躍したが飛行能力は備わっていない。

ティズはギュウッと002に抱きつき必死に攻撃を阻止していた。

「……ア…ぁ」

002の手からSPガンが滑り落ち落下していく。

全身を震わせ抱きつかれた感覚に力が抜けそうになった。

『ティズ!』

スカールの声に002はハッと我にかえった。

「……」

ティズも顔をあげスカールの方を向くと002に向き直りうつ向いたまま触れようとする腕を待たず両腿に足をかけた。

「ティ」

「スカール様を傷つけるのは許さない」

ティズは顔を上げ真剣な表情でそれだけ言うと002の腿を蹴り出し離れた。

「待っ…!」

002の手は届かず、ティズはヘリから伸びるスカールの手に掴まり引き上げられるとスカールの腕の中に収まった。

『基地を爆破しろ。場所が知られた以上A国に利用される可能性がある』

「…承知しました」

スカールは操縦士に指示を出した。拡声器のマイクをオンにしたまま。操縦士はそれを指摘しなかった。

[002!基地が爆破される!兵士を置いてはいけない!手伝ってくれ!]

「……くそ」

ヘリを尻目に009からの脳内通信で002は基地内へ向かった

降下途中、A国の兵士が避難していくのを目の端で確認した。天井から基地内に入ると締め上げた兵士の数を確認し、気絶した数人を担ぐ009を見る

「俺は上から脱出する!残りは任せた」

「わかった」

002はまとめて縛っていた縄を掴み兵士を引き揚げ、009は残りを担いで基地から脱出した。

ヘリは旋回すると機体の下部に搭載したミサイルを基地めがけ発射した。

崖に見せ掛け森に溶け込んでいた基地から轟音が地鳴りのように響き大量の煙が立ち上った。

「……っ」

空から黒煙を眺めていた002は遠くに消えていくヘリに気づいた。豆粒のように小さくなったヘリを追うことは出来ず、握る縄に力が入った。



・・・→

[ 284/325 ]

←[*prev] [next#]→

[一覧へ戻る]


[しおりを挟む]


トップへ戻る




トップへ戻る
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -