◇第3話「影を追う」


BGの武器製造基地に潜入し制圧に成功した002、009は目の前にいる少年を見つめ永遠のような一瞬に言葉を失った。

「……」

少年は東洋人の顔立ちで前髪で方眼が隠れているが青い瞳にハッキリとした眉を持っている。長い燃えるような明るい赤毛は膝下まで伸びサラサラとなびいていた。

002の毛色と009の顔立ちに似た少年
二人は困惑を隠せなかった。

「―Jぇ!!」

叫ぶように声をあげたのは002だった。
009はハッと我に返り002の方を向く。

少年は一瞬驚き眉をひそめ

「なぜ、その呼び名を知っている?」

怪訝な顔で聞き返した。
冷静な大人びた表情に002は驚きフラフラと数歩前に出る

「は…J?お、俺たちがわからないのか?パパとママだよ…どうしてそんな…防護服みたいなの着て、まるでBGみたいな…」

002は困惑でひきつったぎこちない笑顔でひたすら話しかけ009はしばらく黙って少年を見つめた。

少年は表情を変えず数歩下がり距離を保つ

「……。何を言っているのかわからないが、侵入者は倒すだけだ。」

少年はやや体を沈めると腰のホルスターから小さなSPガンを抜き二人に向かって構え間髪入れずにレーザーを放った。

「ジェット!」

009が叫び002を押しレーザーをかわす。攻撃されたことに002は青ざめとても信じられないといった顔で少年を見た。少年はSPガンのモードを切り替え軌道を修正し二人に放つ。

「なんっやめなさい!J!」

爆発音で002の声は掻き消え床に着弾した数発のエネルギーマグナムで煙が舞った。

煙の舞う中で二人は身を屈め009は002の両肩を強く掴み顔を寄せた。

「しっかりするんだ!彼はJじゃない!」

009の叫ぶ声に002は困惑し顔を向ける。

「でも、どう見たって…」

「ここがどこだか忘れたのか!?003が言っていたのを忘れたのか!!?」

「……」

002は動揺した表情のまま状況を振り返りだんだんと絶望に似た顔に変わった。

「子供型平兵器は…サイボーグ…人間の子供を兵器にしたのか…?」

「恐らく…そういうことになる…」

009は苦しそうな顔を反らしうつむいた。


「そこか!!」

煙が晴れきる前に少年は二人をとらえ、少年の構えるSPガンの照準が002に向いた。

「……―――」

002は驚いた顔から慈しみに満ちた優しいに変わり少年を見つめ返した。

( ああ、でもやっぱり… )

002は少年にJを見た。

笑う顔、泣く顔、怒る顔、色々な記憶が一気にめぐった

あまりにも似すぎていた。とても憎悪など向けられなかった。

抱き締めたいとすら考えていた。

「!?」

無意識に両手を広げ迎え入れるように立つ002に少年は発砲せず構えたまま様子をうかがう。

「なぜ、そんな顔をする。お前たちは悪いやつのはずだ。」

「……」

少年の問いかけに002は答えず

「…名前を聞いてもいいか」

優しい口調で聞き返した。

少年は黙り002を見つめしばらく沈黙が続いた。その間も002は慈しむように微笑みかけ少年も表情を変えないまま002を見た

「……ぼくは」

少年は口を開いた。002がやや首を傾いで言葉をまつ

「ティズ。子供型サイボーグシリーズ000(トリプルゼロ)のティズ。」

少年はティズと名乗り、同時にブラックゴーストに造られたサイボーグだと告げた。

「そう、ティズ…か」

「……。」

「いい名前だな」

002は少年がJではないことを再確認すると悲しそうに微笑み短くかえした。



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