◇第2話「戦場に戯る」

両国を隔てる壁を爆破し新兵器を保有すると思われるB国から来たのは

二色の灰色をした袖の長い防護服に身を包んだ小さな女の子だった。


「…ずいぶんお可愛らしい兵器だな」

監視塔から見下ろす007が冗談めいて言った

女の子は辺りを簡単に見回すと

「おしまい!」

弾むような子供らしい声で言った

周囲にはバラバラに壊れたサイボーグマンが転がりどれも機能を停止している

女の子は袖を揺らしクルッと振り返るとB国の領地へ歩き出した

007の隣に立っていた008が身を乗りだし

「あの子を捕まえよう!なにか情報が得られるはずだ」

そのまま監視塔から降りた。006、007もそれに続いた

「…?」

女の子は気配を感じたのか三人に振り向きキョトンとした顔で首をかしげた

「だれですの?サイボーグマンじゃないです。ここの兵士にも見えません。」

近くで見る女の子は収縮する赤いレンズの眼以外、本物の女の子のようで007は紳士的に軽い会釈をした

「やぁリトル・レディ。君はとても強いんだね」

女の子は好意的に笑った

「君は誰なんだ、どうしてサイボーグマンを破壊したんだ」

008の直接的な質問に女の子は更にニコッと笑って

「お仕事です!ティゼはお仕事をしました」

自分をティゼと言った女の子は答えた



{これは…上層の指示に従っているだけか?}

{まるで無邪気な子供ネ}

{こりゃあ言いくるめて無傷で連れ帰れるんじゃないか?}

三人は脳内通信で会話し、ティゼは笑った顔で首をかしげた

三人はティゼを連れ帰る方向で話すことにした

「ごほん…レディ・ティゼ、君のことをもっと知りたいんだ。どこかゆっくり話せる場所に移らないか?ここは殺風景でちらかっている。どうかな?」

聞いていたティゼはきゅっと口をとがらせ

「知らない人についていってはいけないのですっ」

裾を振り両腕でバッテンを作った

「我輩はグレートブリテン、イギリスの生まれだ。君はレディ・ティゼ。名前を知っていればもう知らない人ではないと思わないかい?」

ティゼはしばらく考えバッテンをした腕をパッと解いて袖を振ってポンっと合わせた

「はい!知っていますの!」

輝くような笑顔で

「裏切り者のサイボーグ!」

そう言い放った。

三人に緊張が走った。ティゼは嬉しそうに

「スカール様が喜びます!裏切り者は壊すのです!」

そう言ってぴょんぴょん跳ねた

「ま、まってくれレディ、我輩たちは…」

007が狼狽えると、ティゼはドレスの裾を掴む仕草をすると頭を軽く下げ

「さようなら、00No.サイボーグさんたち」

笑顔を向けた。眼は笑っていなかった



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