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ドルフィン号はA国へ向かい、着陸許可の下りた空港に着陸した

私服の006、007、008とギルモア博士が案内人に連れられ002、009は防護服を着て加速装置を使い建物を移動した

A国は途上の国なりに大きな街が栄えていて、都市部の低いビル街を中心に家々が並び、遠ざかるにつれて農地が広がっていた

A国の産業は主に鉱物資源の輸出、鉱物堀で働く者が人口の3割をしめていてそのほとんどが低賃金の貧困層だった

博士たちは客人としてA国の官邸に招かれた。博士の功績はA国にも知られていて「兵器について心当たりがある」と話すと対談の場を設けることが出来た

官邸に到着すると秘書数名と代表者が出迎えた


官邸内に入り会議室へ導かれる。大きなテーブルを囲む椅子へ座るよう促され、博士は代表者と対面するよう腰掛けた。006、007、008の三人はその後ろに立ち002と009は官邸の屋上に待機し、開いたままの通話回線に聞き耳を立てた。

挨拶もそこそこに博士たちは戦争が再燃した理由について話を聞く

代表者は秘書から何枚かの資料を受け取り、博士たちにも見えるようにテーブルに広げた


話によると

A国もB国も新しい国の指導者になってから
意識が変わり、資源の奪い合いや宗教の違い、人種などからなる長い冷戦に終止符を打ち平和協定を結ぶことを望んでいた

そして反対派や支援者などの対応の末、第一歩として代表者同士の対談がなされることになった

しかしB国は指定した日時、対談の場に来なかった。後日我々に送られてきたのは「友好決裂」を意味する手紙とB国代表者の死亡通知だった

B国は我々がB代表者を殺したと主張してきたが、我々は対談の日に会っていないのだから不可能だと返した

しかし相手は聞く耳はもたなかった

そして先月、我々は攻撃を受けた。B国を糾弾したが「我々はしていない」と返事を受けた

それからは互いが信じられなくなり、攻防を繰り広げる現在に至った。


代表者は辛そうにうつむき溜め息をついた

「冷戦の頃から武力が衰退していた我々は国境のバリケードを強化し迎撃していたが攻め入るには至らず限界が来ていた。降伏も視野に入れていた時、彼らが兵器の話を持ちかけた…」

博士は身を乗り出して手を組み

「それがブラックゴースト、ですな」

確信をついた。代表者は頷いた

「兵器を売る商人と聞いていたので、サイボーグマンと言われる黒ずくめの集団がやってきた時は不信に思いました。しかし戦闘能力は我々の兵力の比ではなかった。勝てるかもしれない…そう思いました。」

「でも、B国も新たな兵器を所持していた」

「黒の精鋭が、サイボーグマンがどんどん倒され我々は絶望しました。また新たに兵器をブラックゴーストから手に入れなければ…」

代表者は頭を抱えテーブルを叩いた

「しかし、戦争の火種がそのブラックゴーストだとしたら?」

博士はしっかりと前を見据え、代表者に話しかけた

代表者は驚いた様子で顔を上げた

「私たちはブラックゴーストが過去、そうして国を争わせた歴史を知っています。ここにいる若者の故郷がそうでした」

博士は008を一瞥し008も顔を見返した

「奴等は火種となるきっかけを作り、弱体化が見られる国に一度荷担し、もう一方にも武器を売り戦争を激化させる。互いが弱った頃に上層部を乗っ取り両国を支配するのです。」

「あなたたちは…一体」

「私達はブラックゴーストを知る者であり倒す宿命を背負った者です。今後ブラックゴーストから兵器の入手は避けて頂きたい。代わりに私達がA国を守ります。」

博士が話し終えると代表者はしばらく考え

「話はわかりました。私はあなた方を信じたい。ですが、証拠がありません。どうやって我々を守って頂けるのです?」

博士はニッコリ笑って、007がこめかみに手を当てた

「それはそちらの方が証明してくれるでしょう」

代表者の後ろに立っていた秘書の一人に顔を向けた

「!」

秘書の男は後退り、とっさに部屋のドアへ走りだし開けた瞬間、何かで殴られたように不自然に体勢を崩し倒れた

「なッなんだ!?」

代表者は立ち上がりよろけた。秘書の男を他の秘書たちが起こそうとするとその重量に驚きやっと上半身を起こした

「監視に送り込まれたサイボーグです。そして、あなた方をすぐ葬れるように潜入していたのです。恐らく入れ替わった秘書はもう殺されているでしょう」

博士は席を離れると代表者に近づいた

「な…」

代表者があっけにとられていると007が秘書の男の横にかがみ首元にプラグ用の穴を見つけた

「逃走は防げましたが私達が来たことは恐らく知られてしまっている。ですが、心配しないで頂きたい。」

「!」

代表者がハッと秘書たちの後ろを見た

「彼らもまた、サイボーグであり、戦いのプロです」

ドアの前、防護服を着た009が立っていた


「…あぶねーあぶねー」

屋上で待機したままの002は小さくつぶやいた





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