◇プロローグ 「残り香」
その空間は夜空のように暗く
ポツポツと無数の光に満ちていた
空気の澄んだ山頂から見る星空によく似た景色
でもそこは平たい地面が広がり、一面が稲穂の海のように黄金色の波が揺れていた
淡く光る金色はあたり一面を照らしている
「………」
その空間には少年が一人だけ立っていた
背を向け長い赤毛を揺らして光に満ちた闇を眺めている
―チカッ
無数の光の一つが瞬いた。
光は流れ星のように小さな雷のようにチカチカと闇を滑っていった
「――を呼ぶのはだぁれ?」
少年は小首を傾げるとザァッと風を受けたように黄金色の波が揺れ
無数の光はチカチカと次々に瞬き闇を滑っていった
「…行かなくちゃ」
少年は赤毛を揺らして振り向いた
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