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ギルモア邸を飛び出してから数時間

息も絶え絶えアルベルトが到着したのはメモにあったジョーとジェットが暮らすマンションアパートだった

「…さ…306号…室…」

ふらつく足でドアの番号を確かめながら一番奥の角部屋の前に着いた

部屋番号の下には『島村』のネームプレートがぶら下がっている

(何が島村だあんにゃろ…)

ネームプレートにイラっとしながらインターホンを押すと弾むような呼び鈴が鳴った

『ピーンポーン♪』

ほどなくしてドア越しにこちらに近づく足音と聞き慣れた声が聞こえた

「はーい、どちら様ですかー」

ガチャッと開いたドアの先には少しビックリしたジェットが立っていた

「おお、アルベルト…」

「ジェット!!009と同棲って一体どういう−」

開けたドアに割って入った直後

「ママー」

子供の声がした

「………ま?」

目の前にはジョーにそっくりな顔立ちとジェットにそっくりな毛質と目の色の子供

「ママーお客さんー?」

「あぁJ、この人は…」

アルベルトはパチッとその子供…Jと目があうと


「………遅かっ…た……ぁ」

フッとよろめいてその場にぶっ倒れた。

「ぎゃー!!?アルベルトォ!!」


その時のアルベルトの頭には“男同士で子供は出来ない”という常識は全く無く

すっぽりと忘れ去られていたのだった


***


「――……そうか、あの子は…A.I.…なのか…」

事情を聞いたアルベルトはホッと息を吐いて出されたコーヒーに目をやった

Jはジョーとリビングでお絵描きをしていてジェットはダイニングテーブルにアルベルトと向かい合わせで座って話していた

「でもJは、自分が本当の子供だと思ってる…たぶんな。俺にとっても本物と変わりねぇよ…子供なんて産んだことねぇけどさ…」

ジェットは穏やかな表情でJを見つめアルベルトはその横顔を見つめまるで罪を犯すように重く口を開いた

「ジェット、もう一度聞くが−」

「あーもぅ、Jがいるのにするわけねーだろ、何回言わせんだよ」

ジェットは困った顔で笑いながら答えた

「………すまん」

アルベルトは悪いことをした子供のようにシュンと下を向いた

「………」

それを見ていたJはジョーに小声で聞いた

「……ねぇパパ」

「ん?」

「あの人どこかいたいのかな?」

ジョーは少し考えてスッとJの胸を指さして

「…強いて言うならココがね」

複雑な顔をして答えた

「…いたいのなおる?」

「さぁね」

ジョーはアルベルトを心配するJの頭を撫で優しく話した

「あの人は怖い人じゃないよ、パパたちの友達だからね」

「…お名前はなんていうひと?」

「ハインリヒ…アルベルト・ハインリヒだよ」

ジョーが教えるとJは突然アルベルトの方へ歩いていった





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