┗2
砂糖の塊を担いだアタシたちは幅の広い階段を選び降りていく
「お疲れさまです。なかなかのサイズですね。第五食物庫へ行って下さい」
巣の内部を知り尽くした指示蟻から『第五食物庫』に行くよう指示を受ける
第五食物庫は主に木の実や虫の腹などの大きなものを保管する広い倉庫で到着すると入口に並んだ
門前に立つと別の指示蟻に持ってきたものを見せる
「お疲れさまです、2人でこの大きさは大変でしたね。奥に運んだら今日の食事分を持ち帰って下さい」
「はい」
外で活動する働き蟻は自分たちが運んだものの一部を貰い夕飯とする
兵隊蟻は護衛した運搬部隊の収穫の一部や捕らえた他の昆虫を肉としてバラし取り分としている
他の働き蟻も労働に見合った分だけを支給され
それはつまり『働かざる者食うべからず』という掟
残酷で、でもそれが当たり前
アタシたちはそう育ってきた
これからもそれは変わらない
「ニィコ、砂糖は水で溶かして飲む?」
「そうね。そうしよっか」
働き蟻や兵隊蟻が食事をする場所は女帝国の最下層付近に存在し
更に下には地下の泉『女帝泉』があり自由に利用できる
普段着に着替えたアタシたちは泉へ水を取りに向かった
***
地下の『女帝泉』は壁から染み出た地下水が一時的に溜まる岩石質の地層で、カサが増すと土に吸収される
それにより常に貯水量が安定するが、“大雨の日”だけは吸収が追いつかず泉が増水し下層は出入り禁止になる
泉は給水と国に入り込んだ水を逃がす大切な機能も果たしていた
今日は1日雨が降らなかったので泉が開放され、他の蟻たちも水を汲みに集まっていた
「このくらいでいいかな」
アタシは給水ポイントから自分の飲む分を手で汲み取る
水は表面張力というアメンボなどが水面に浮かぶための力によって少し平たい球体になった
手で持った水の中に拳大の砂糖を入れると砂糖は水の中を漂い消えて水全体に混ざり砂糖水になる
「…ぷはー、おいしいー!」
イアンは水に顔をくっつけて思い切り吸い込み渇きを潤した
アタシもちょっと口をつけて飲んだ
「おいしい…」
アタシはホッとため息をついた
→
[ 316/325 ]
←[*prev] [next#]→
[一覧へ戻る]
[しおりを挟む]
トップへ戻る