「―働き蟻―」
―働き蟻―
…外にいると本当に驚く
明るかった世界はゆっくりと色をなくして夜という時間がくる
真っ暗になるとポツポツと白や赤や青い光が浮かび彩られると言われている
「イアン…世界って綺麗だね」
「そうだねニィコ」
「もっと見ていたいな」
「だめだよニィコ、時間よ」
「……うん」
…でも、アタシたちはその時までには住処に戻ることが決まっていて、アタシは少し肩を落とし歩き出した
働き蟻食糧捜索と運搬補助として今日のノルマを果たしたアタシは友達のイアンと砂糖の塊を担いで帰路を行く
夕陽でオレンジ色に染まった世界の中
仲間がつけた帰り道の印をたどり他の運搬部隊と合流しながら、アタシたちの家『女帝国』に到着した
帰ってきたアタシたちをまず迎えるのは吹き抜けの様な大きな縦の洞穴
いくつもの螺旋階段がその縦穴に添うように作られ下へと伸びる
無数にいる他の働き蟻たちが螺旋階段を下りて、まるで縦穴に吸い込まれていくようだった
出入り口付近や帰路につく働き蟻たちのそばには兵隊蟻が付いていて働き蟻たちの様子や遠くの様子を見ている
「……」
数日前に蟷螂に襲われ、兵隊蟻の兵士、アンジェリカ様に助けられてから
アタシは無意識にその姿を探していた
働き蟻より数が少ないとはいえ見つけるのは難しい
兵隊蟻の居住エリアに行けば会えるかもしれないが馬鹿げていると否定する
その反面
アタシはずっと彼女を探し続けていた
→
[ 315/325 ]
←[*prev] [next#]→
[一覧へ戻る]
[しおりを挟む]
トップへ戻る