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ジョーの背を見送り、ジェットは桜の木を見上げた。太く力強い幹から伸びる何本もの枝につく淡い色の花
「…ソメイヨシノ…か」
ひとつの花に花弁が五枚あり、均一な整った形が美しい、日本で有名な桜のひとつ
風に揺れてハラリと散る様は、儚げで美しく、多くの人を魅了し、その下へ誘う
ジェットは、花吹雪を目で追うJの頭を撫でて
「J、来年もお花見しようね」
そう優しく笑った
Jは頷くと、今度はジェットをじっと見て突然聞いた
「ママはパパのこと好き?」
「え」
ジェットは戸惑って、少し考えて、答えを出した
「うん…好きだよ」
「どんなところが好き?」
Jの質問にちょっと照れながら、でも、ポツポツと話した
「ママはね、あんまり人に好かれる様な人じゃなくて、ケンカとかをいつもしてるような…悪い人だったんだ」
「…」
「でも、何でかな…ジョーは、パパはママを好きになってくれて、何度も何度も好きって言ってくれたんだ…」
「ふぅん」
「それと…ママは昔に一度、大怪我をして、パパは一生懸命助けようとしてくれて、おんぶして運んでくれて…広い背中だった…」
ジェットはふっと目を閉じた
「…それで、思ったんだ…"この人と一緒にいたいな"って」
ジェットは桜を見上げ照れながら幸せそうに笑った
「パパ、かっこいいね!」
Jがジョーが歩いていった先を尊敬の眼差しで見ているとき
(でも…結構スケベなんだよな…004とよく張り合うし…独占欲が強いんだよ…あいつ)
ジェットはジョーと一緒にいて後悔したエピソードを色々思い出していた
「―よかったねママ!」
Jが突然ジェットに振り向いて、言った
「あっえ?なに?」
ジェットは考え事でJの振りに一瞬驚いた
「だって、ママは、パパと一緒がいいなって、思ったんでしょぉ?」
「…うん」
ジェットは一応に頷き、Jは少しキリッとした表情で続けて話した
「おねがいが叶うのは幸せなことだから、ママはパパといることが、幸せなんだね!」
「………しあわせ」
ジェットは穏やかに心が暖かくなる感覚を覚えた
Jとの暮らしの一日目、夕食を3人で食べている時感じたそれに、よく似ていた
「―――…」
「よかったね!ママ」
ニッコリと笑うJに
「…うん…」
ジェットは泣きそうな笑顔で頷き、
「ありがとう、J」
「…えへへ」
Jを抱きしめた。ジェットはその時初めて、自分は幸せなんだと気付いた
そして、失いたくないなとも思った
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