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それから鉄条は家で留守番をすることが多くなった。しかし一人で家にいるのは危ないので常に誰かが一緒についていて特に豚は鉄条を可愛がりたいのか近くにいがちだった

「鉄条!みてみてお古が出てきた!」

豚が出したのはボスと出逢って間もない頃の服でどう見ても子供服だった

「おーさすが貧乏性なだけあるな」

「いやいや。鉄条ほどじゃないよ」

鉄条の冗談を冗談で返した豚はひらひらと服を見せて着て欲しいなぁ、と目で訴えた

「…とりあえず着てみるか」

「白ブリーフもあるよ!」

「それはさすがにいらん。直穿きでいい」

鉄条はブカブカのトランクスを脱ぎショートパンツを穿いてポロシャツを脱ぐとグレーのTシャツに手を伸ばした

「うゎ肌真っ白!あは!ここ超ピンクだし!」

豚は半裸の鉄条をベタベタ触り乳首をつまむ

「ちょっ…やめろってくすぐったいっ」

悶絶する鉄条に豚はギュムッと抱きついた

「肌もモチモチ〜」

豚が鉄条の子供肌を堪能していると

「…うぅ〜」

鉄条は泣いて…

「あっごめ…」

いるフリをして豚の腕から脱した

「スキあり!」

次の瞬間にはTシャツをキッチリ着ていた

「あぁっ騙したな!」

「ふふんっ見た目は子供、頭脳はおとn」

「…ただいまー」

2人の悶着の途中でシロアリ駆除の仕事から毒蛾が帰ってきた

「あ、おかえり」

鉄条が明るい表情で振り向いて毒蛾と目が合った

「!」

毒蛾は一瞬目を見開いて言葉を失う

「…て」

「どぉ?可愛いでしょ!」

毒蛾が何か言いかけて豚が割って入りハッと我に返った

「…その服」

「お古だ。豚が見つけてくれたんだ」

「そうか」

見上げる鉄条と見おろす毒蛾。薄らと感じる違和感に鉄条は首をかしげた

「?」

毒蛾は鉄条から何となく目をそらすと豚が鉄条の後ろに立ち何か持って近づいているのが見えた

「豚なにし」

「へへへ、ジャーン!こんなのも見つけてました!」

豚は鉄条の頭に自転車用のキッズヘルメットをかぶせた

「!!」

「どぉ?昔のまんまじゃない!?」

豚は楽しそうに言って

「おぉ兜がデカくてかぶれないから落ち着かなかったんだ」

鉄条は嬉しそうにメットの位置を自分で調節し正した

ふと鉄条が毒蛾の方を向くと毒蛾は複雑な表情をしていた

「……毒蛾?」

鉄条が近づこうとすると

「…浴室に行く」

毒蛾は苦い顔のまま鉄条を横切り早足で部屋を出て行った


***


パタンと閉まる引き戸

毒蛾は戸にもたれかかると天井を仰いだ

「……」

頭の中でフラシュバックする昔の思い出

さっき見た小さな鉄条が過去の姿と重なり自分に微笑みかける

…少年時代…

自分の危険な体質のことなど気にとめず彼はいつも一緒にいた。2人だけで歩いた路地裏、優しくて温かい手

助け合って支え合って、それがずっと続く気がしてた

でも唐突にそれは終わり

そして自分をかばって彼は右目を失った…

「全部、今更だ…思い出したって…何もできない…」

感情を押し殺し消え入りそうに言うと毒蛾は唇を噛んだ





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